介護現場の情報共有を変えるDX|記録・申し送りをケアに生かす進め方

この記事のまとめ

3行でわかる要点

  • 介護の情報共有は、記録の電子化から、確認・対応・振り返りまでをつなげて考えます。
  • 通常の記録、申し送り、緊急連絡には、それぞれ別の役割と確認ルールが必要です。
  • ツール選定前に二重入力と情報の置き場所を整理し、導入後は負担とケアの両方を確かめます。

介護現場への影響
職員が必要な情報を探す時間や伝達漏れを見直し、利用者の状態の変化にチームで対応しやすい業務を目指します。

確認・行動すること
まず一つの業務について、誰が記録し、誰がいつ確認し、対応結果をどこに残すかを書き出してください。

介護現場の情報共有を変えるDXとは、記録や申し送りをデジタル化するだけでなく、集めた情報が次のケアや判断に届くよう、仕事の流れを見直すことです。端末が増えても、確認する人と対応の期限が決まらなければ、情報は活用されません。本記事は、記録・連絡・対応をつなぐ運用を、介護職と事業所の管理者向けに整理します。

このURLに関連していた旧テーマ「介護DXへの取り組み〜介護現場の底力を高める情報プラットフォームの構築〜」を踏まえ、2026年10月21日に実務解説として新たに編集しました。旧記事の復刻やセミナーの講演録ではありません。

記録しているのに情報が伝わらないのはなぜか

食事の記録は介護ソフト、家族からの要望は連絡ノート、夜勤への伝達は口頭という状態では、全体を把握するために複数の場所を探すことになります。同じ内容を何度も転記すれば、時間だけでなく転記漏れや更新のずれも課題になります。

編集部が最初に勧めるのは、ソフトの比較ではなく、情報の流れの棚卸しです。たとえば「食事量の変化」を選び、発見した人、最初の記録先、申し送り先、確認者、対応結果の記録先を一列に並べます。誰も確認していない場所や、目的を説明できない転記が見つかれば、改善対象を具体的にできます。法令や事業所の規程に基づく記録・保存は維持したうえで、重複する作業を整理します。

介護現場の情報プラットフォームとは

ここでいう情報プラットフォームは、必要な職員が、担当業務に必要な情報を安全に確認できる共通の仕組みを指します。必ずしも一つの製品にすべてを集めることではありません。記録ソフトと連絡ツールが分かれていても、正式な記録の所在と参照方法が明確なら、運用をつなげられます。

厚生労働省の生産性向上ポータルでは、業務改善の取り組みとして「記録・報告様式の工夫」と「情報共有の工夫」を挙げています。機器を選ぶ際も、入力の便利さに加え、情報が誰の行動につながるかを考える視点が役立ちます。取り組み全体は介護DXの意味・導入の進め方で解説しています。

介護記録・申し送り・緊急連絡を使い分ける

以下は編集部による運用設計の例です。サービス種別や事業所の手順に合わせて調整してください。

情報の種類 主な役割 運用で決めること
介護記録 観察した事実、実施した支援と結果を残す 正式な保存先、記入者、日時、訂正履歴
申し送り 次の勤務者などに、継続して確認・対応すべき点を伝える 確認担当、期限、未対応事項の引き継ぎ
緊急連絡 直ちに判断・対応が必要な状況を伝える 連絡手段、応答がない場合の次の連絡先、事後の記録

「入力した」「既読が付いた」ことと、必要な判断や対応が済んだことは別です。急変など緊急性のある状況を、通常の投稿への返答待ちにしないよう、電話や直接連絡を含む事業所の緊急対応手順を優先します。申し送りには対象の記録を参照できる形を整え、対応した人が結果を残すところまでを一つの流れにします。

共有した情報をケアの変更につなげる具体例

次は実在の利用者や施設の事例ではなく、運用を考えるための架空例です。ある利用者の食事量が普段より少ないと気づいた場面を想定します。「元気がない」とだけ伝えると、次の職員は何を比べればよいか判断しにくくなります。

そこで、観察した時間、食べた量、本人の言葉、実施した支援を、事実と職員の考察を分けて記録します。連絡を受ける担当者と確認時刻も決め、必要に応じて看護職などへ相談した経過と指示・対応結果を残します。次の勤務者は、それらを確認したうえで変化を追います。

重要なのは、システムが自動的に病気を判断するという理解をしないことです。観察情報を整理する機能と、医療的な評価・判断は区別します。データを見やすくしても、本人への確認や専門職への相談を省略する根拠にはなりません。

導入前に決める運用と個人情報の管理

小規模な試行でも、次の項目を文章にして共有すると、職員ごとの使い方のずれを見つけやすくなります。

  • 記入ルール:必須項目、事実と考察の分け方、記入のタイミング、誤入力の訂正方法。
  • 確認と対応:勤務開始時などの確認時点、担当者不在時の代行者、未対応事項の扱い。
  • アクセス管理:個人ごとのアカウント、職務に応じた閲覧権限、異動・退職時の権限変更。
  • 端末と持ち出し:画面ロック、置き場所、紛失時の連絡、私物端末や写真保存の扱い。
  • 外部との共有:共有目的、相手、必要な情報の範囲、同意等の適切な根拠と事業所の手続き。
  • 停止時の対応:通信・停電・障害時の連絡手段と代替記録、復旧後の照合方法。

全職員への一斉導入より先に、限定した業務で試し、入力に不慣れな職員も含めて操作を確認する方法が考えられます。紙との併用は、目的・期間・正式な保存先を明確にします。終了条件のない併用は、二重入力を固定化するおそれがあります。

ツールのデモ・見積もりで確認すること

説明を聞くだけでなく、自事業所の架空の業務場面を用意して操作を試すと、運用との相性を確かめやすくなります。実際の利用者情報を、確認のないデモ環境へ入力しないでください。

  • 既存の記録ソフトと連携できる情報は何か。自動連携か、手動転記か。
  • 未確認・未対応の情報を区別できるか。訂正履歴や操作履歴を確認できるか。
  • 端末、通信、初期設定、研修、追加アカウントを含めた総費用はいくらか。
  • 障害時の連絡窓口と支援範囲はどうなっているか。
  • 契約終了時に、必要な記録を読み出せる形式で出力・移行できるか。

2022年10月4日付のLiaison Design株式会社の公式告知は、10月13日開催のウェビナーで情報プラットフォームと「iTherapy」の活用を扱うと案内しています。これは過去の開催情報です。本記事は参加募集や製品の推奨を目的とせず、現行の価格・契約条件・連携仕様を確認済みの情報として掲載するものでもありません。製品の検討時は提供元に最新条件を確認してください。

導入効果は時間・伝達・ケアの三つで確認する

編集部は、導入前後で次のような指標を組み合わせることを提案します。入力時間だけが短くなっても、確認の手間が増えていれば、チーム全体の改善とは判断しにくいためです。

観点 確認する例
業務の負担 記録・転記・情報探索にかかる時間、終業後に残る記録作業
連携の確実さ 確認期限を過ぎた事項、伝達漏れ、対応結果が追えなかった件数
ケアへの活用 共有情報を受けて支援を見直した経過、利用者と向き合う時間、職員の困りごと

比較では、利用者数、状態像、人員配置、曜日などの違いを併記します。短い試行期間の変化だけで、事故予防やケアの質の向上を断定しないことも必要です。まずは一つのフロアや業務で振り返り、記入項目や通知の量を調整してから広げます。

介護福祉士ニュースの考察

編集部の見解
情報共有の成否は、保存場所をまとめたかより、次に行動する人が迷わなくなったかで確かめたいところです。通知を増やすだけでは重要な連絡が埋もれる可能性があります。継続課題と通常記録を整理し、確認担当と対応結果を追える形にすることが、導入前の具体的な改善になります。

事業所が確認するチェックリスト
①正式な記録の所在を説明できるか。②誰がいつ確認するか決まっているか。③緊急連絡は通常投稿と区別されているか。④職員交代後も未対応事項が残るか。⑤削減できた作業と新たに増えた作業を両方把握しているか。この五点を、実際の一日の流れで確認することを勧めます。

記事情報・確認方針

一次情報・参考資料:厚生労働省・介護分野における生産性向上ポータルサイト/厚生労働省・生産性向上ガイドライン等の案内/Liaison Design株式会社・2022年10月4日付ウェビナー告知

資料公表主体:厚生労働省、Liaison Design株式会社。過去のウェビナー共催:東七株式会社 東七介護サービス/リエゾングループ(公式告知表記)。本記事の運用例・チェックリスト・評価指標は、公式資料を踏まえた編集部の提案です。取材・製品の実機検証は実施していません。

情報確認日:2026年10月21日
執筆:介護福祉士ニュース編集部
内容確認方針/誤りのご連絡:info@17kaigo.jp

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