このページでわかること
- 介護DXの意味と、ICT・介護ロボットとの違い
- 介護現場でデジタル化できる業務と期待できる効果
- 導入の失敗を防ぐ進め方と確認ポイント
介護DXは、単に新しい機器やソフトを導入することではありません。デジタル技術を使って記録、情報共有、見守り、請求などの業務を見直し、職員が利用者へのケアに集中できる環境をつくる取り組みです。
このページでは、介護職・介護事業者が全体像をつかめるように、介護DXの基礎から導入手順、注意点までを体系的に整理します。
最終更新:2026年9月23日
介護DXとは
DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、デジタル技術を活用して仕事の進め方やサービスのあり方を変えることを指します。介護DXでは、記録を紙から電子に置き換えるだけでなく、集めた情報をケアや業務改善に生かすところまでが重要です。
ICT・介護テクノロジーとの違い
- ICT:記録ソフト、タブレット、チャットなどを使い、情報をデジタル化・共有する手段
- 介護テクノロジー:ICT、見守りセンサー、介護ロボットなど、介護を支える機器やサービスの総称
- 介護DX:技術の導入をきっかけに、業務手順や連携方法、サービス提供の形まで見直す取り組み
ツールの導入は介護DXの入口です。現場の課題が改善され、働き方やケアの質に変化が生まれて初めて、DXが進んだといえます。
介護DXが必要とされる背景
人手不足のなかでケアの時間を確保するため
介護現場では、記録や申し送り、請求など、利用者に直接向き合う以外の業務にも多くの時間がかかります。重複入力や情報探索を減らせれば、限られた人員でもケアに充てる時間を確保しやすくなります。人材面の課題は「介護現場の人手不足はなぜ起きる?原因・影響と今後の対策」で詳しく解説しています。
情報を途切れさせないため
紙の記録、口頭の申し送り、個別の表計算ファイルに情報が分散すると、確認漏れや伝達の遅れが起こりやすくなります。必要な人が必要な情報を安全に確認できる仕組みは、継続的なケアにも役立ちます。
業務改善を続けるため
記録や稼働状況をデータとして把握できると、負担が集中している業務や時間帯を見つけやすくなります。経験だけに頼らず、事実をもとに改善策を検討できます。
介護DXの対象になる主な業務
- 介護記録:タブレットやスマートフォンからの入力、音声入力、記録の一元管理
- 申し送り・情報共有:職種や事業所をまたいだ連絡、共有事項の確認
- 見守り:センサーやカメラによる状態把握、異常時の通知
- 移乗・移動支援:介護ロボットや装着型機器による身体負担の軽減
- 請求・事務:介護報酬請求、帳票作成、勤怠・シフト管理の効率化
- コミュニケーション:オンライン面談、遠隔支援、家族との連絡
- 教育:動画マニュアル、オンライン研修、OJTの標準化
介護DXで期待できるメリット
記録と転記の負担を減らせる
同じ内容を複数の書類へ書き写す作業を減らし、一度入力した情報を必要な業務で活用できるようにします。
情報共有が速くなる
最新の記録を関係者が確認できれば、勤務交代時や多職種連携での伝達をスムーズにできます。
職員の身体的・心理的負担を軽減できる
移乗支援機器や見守り機器は、腰などへの負担や夜間巡回の緊張を軽減する可能性があります。ただし、機器だけに任せず、利用者の状態に合わせた運用が必要です。
ケアの質を見直しやすくなる
記録を蓄積して変化を把握できれば、ケアプランや対応方法を検討する材料になります。業務時間が短縮できれば、利用者との対話や観察に時間を振り向けられます。
導入前に知っておきたい注意点
- 導入費用だけでなく、月額料金、保守、端末更新、通信費も確認する
- 既存の業務をそのままデジタル化すると、かえって操作が増える場合がある
- 職員のIT経験に差があることを前提に、研修と相談窓口を用意する
- 個人情報の権限管理、端末紛失、パスワード、バックアップを確認する
- 通信障害や停電時にも最低限の業務を続けられる手順を決める
- 契約終了時にデータを取り出せるか、他システムと連携できるかを確認する
失敗を防ぐ介護DXの進め方
厚生労働省の生産性向上に関する資料でも、まずプロジェクトチームをつくり、現場の課題を見える化して改善を進める考え方が示されています。
推進チームをつくる
管理者だけで決めず、実際に使う介護職、看護職、ケアマネジャー、事務担当などを含めます。現場の困りごとを拾える体制が重要です。
現状の業務と課題を見える化する
「何に時間がかかるか」「どこで転記や確認待ちが起きるか」を洗い出します。ツール選びより先に、解決したい課題を明確にします。
目標と指標を決める
「記録時間を短縮する」「申し送りの漏れを減らす」など、導入後に比較できる目標を設定します。操作回数だけでなく、ケア時間や職員の負担感も確認します。
小さく試す
一つのフロア、一つの業務など範囲を絞って試し、使いにくい点を修正してから広げます。導入初期は一時的に負担が増えることも見込んでおきます。
運用ルールと研修を整える
入力項目、確認のタイミング、トラブル時の連絡先を明確にします。操作説明だけでなく「なぜこの運用に変えるのか」を共有すると、定着しやすくなります。
効果を測り、改善を続ける
導入して終わりにせず、目標に対する変化を定期的に確認します。不要な入力項目や二重運用が残っていないかも見直します。
ツール選定のチェックポイント
- 解決したい課題に必要な機能が合っているか
- 介護現場で迷わず操作できるか
- 既存の介護ソフトや端末と連携できるか
- 初期費用、運用費用、更新費用の総額は妥当か
- 導入支援、研修、問い合わせ対応は十分か
- アクセス権限、通信の暗号化、バックアップなどの安全対策は明確か
- 障害時の対応と復旧方法が決まっているか
- データの書き出しや契約終了時の扱いが明記されているか
補助金・導入支援を確認する
厚生労働省は、介護テクノロジーの導入や定着を支援する事業を案内しています。対象機器、補助率、申請時期などは年度や都道府県によって異なるため、導入を決める前に所在地の都道府県や指定窓口で最新情報を確認してください。
介護報酬との関係を確認する場合は「介護報酬改定とは?変更点と確認ポイント」も参考にしてください。
介護職の仕事はどう変わる?
介護DXの目的は、職員を一律に減らすことではありません。機械が得意な記録、集計、通知を任せ、人にしかできない観察、判断、対話に時間を使えるようにすることです。
一方で、新しい入力や機器の管理が増えるだけでは負担軽減につながりません。導入前後で業務量を比較し、不要になった作業を実際にやめることが重要です。
介護DXの事例・関連ニュース
よくある質問
ICTを導入すれば介護DXになりますか?
ICT導入は重要な第一歩ですが、導入だけでDXが完了するわけではありません。業務手順を見直し、職員の負担やケアの質に変化が出ているかを確認する必要があります。
介護DXで職員数を減らせますか?
単純な人員削減を前提にすると、現場の負担が増えるおそれがあります。まずは記録や情報共有などの間接業務を効率化し、ケア時間の確保と安全性の向上を目標にするのが現実的です。
補助金を使えば必ず導入できますか?
補助対象や申請条件は事業ごとに異なり、採択が保証されるものではありません。契約前に、都道府県などの公式案内と申請期限を確認してください。
情報の確認方針
本ページは、厚生労働省の介護テクノロジー・生産性向上に関する公式情報をもとに、介護DXの全体像を編集部が整理したものです。制度、補助事業、製品仕様は変更される場合があります。導入や申請の際は、必ず関係機関・提供事業者の最新情報をご確認ください。