この記事のまとめ
3行でわかる要点
- HLCは2026年10月8日、全国29店舗で進める下肢筋力・バランス・歩行の訓練と定期評価を発表した。
- 厚労省の2025年調査では、介護が必要となった主な原因の「骨折・転倒」は14.6%。転倒の発生率とは異なる。
- 通所中の変化だけでなく、自宅の動線、本人の生活目標、転倒・ヒヤリハットを合わせて確認したい。
介護現場への影響
機能訓練の結果を、送迎時の観察や家族・ケアマネジャーとの共有につなぐ視点が重要になる。運動機器の導入だけで取り組みを完結させない。
確認・行動すること
本人が続けたい生活動作と困る場面を聞き、専門職と訓練・安全確認を見直す。自宅環境の確認担当と再評価日も決める。
株式会社HLCは2026年10月8日の公式発表で、リハビリ特化型デイサービス「ソレイルミナーレ」「リハてらす」の全29店舗で行う転倒予防の取り組みを紹介した。下肢筋力、バランス、歩行を組み合わせた訓練と定期的な評価が中心だ。10月10日の「転倒予防の日」を契機とする発表だが、現場ではその後も、訓練を日常生活の安全につなぐ運用が問われる。
HLCの発表は何を示し、何を示していないか
配信資料によると、半日型の通所サービスで、機能訓練指導員等による個別訓練と動作に着目したマシン運動を行い、評価に応じ内容を見直す。歩行やふらつきの変化を家族・ケアマネジャーへ伝え、自宅の段差、照明、履物などの見直しにつなぐとしている。29店舗は2026年10月時点の同社公表数だ。
同社は日常動作が改善した事例も紹介するが、今回の発表からは、比較対照群を設けた転倒件数の減少率や、全利用者に共通する効果は確認できない。事例や実施店舗数を、効果の大きさの根拠に置き換えないことが必要だ。施設ごとの対象者や専門職配置、利用条件も個別に確認したい。
「骨折・転倒14.6%」の分母を読み違えない
厚生労働省が2026年7月15日に公表した2025年国民生活基礎調査の概況では、介護が必要となった主な原因の総数で「骨折・転倒」は14.6%。認知症16.7%、高齢による衰弱15.6%に続く。要介護者に限った区分では骨折・転倒が14.8%だった。
これは「高齢者の14.6%が転ぶ」「転んだ人の14.6%が要介護になる」という意味ではない。調査の対象となる要介護者・要支援者について、介護が必要となった主な原因の構成を示す数値である。社会福祉施設の入所者等は調査対象から除かれるため、施設内の事故率にもそのまま当てはめられない。自事業所の目標値を、この数字だけから決めないようにしたい。
訓練の数値を、本人が暮らす場面と結びつける
厚労省の身体活動・運動ガイドの高齢者向け解説は、多様な動きを組み合わせる運動を紹介する一方、転倒や持病の悪化等のリスクがある人には、年齢や健康状態に応じた適量の見極めが重要としている。一般向けの推奨を、要介護の利用者全員へ同じ負荷で当てはめる説明ではない。
編集部としては「歩行速度が上がった」で報告を終えず、本人が困る場面に戻って確認することを提案したい。例えば「玄関の段差でつまずく」という場合、通所での歩行観察に加え、履物、手すり、荷物を持つ状況などをチームで整理する。これは同社の実例ではなく、訓練と生活を結びつける編集部の想定例だ。
運動の実施可否や負荷は担当専門職と確認し、急なふらつきや体調変化を「筋力不足」と決めつけない。服薬や疾患については看護職、主治医、薬剤師等へ情報をつなぎ、介護職の判断だけで薬を変更しない。基本となる視点は介護の転倒予防と観察・環境調整の解説でも整理している。
事業所と家族で共有したい確認表
次の表は編集部が提案する共有項目で、HLCの運用様式を示すものではない。家族だけに環境改善を任せず、本人の意向を確認し、ケアマネジャーや必要な専門職と担当を分ける。
| 確認する場面 | 共有する内容 | 次に決めること |
|---|---|---|
| 立ち上がり・歩行 | どの時間、場所、動作で不安定になるか | 観察する担当と専門職への報告方法 |
| 自宅の生活動線 | 段差、照明、履物、よく使う物の位置 | 確認できた点と、未確認の点を分ける |
| 転倒・ヒヤリハット | 発生時の状況、けが、対応、繰り返しの有無 | 再評価日と家族への連絡方法 |
| 本人の生活目標 | 買い物やトイレ等、続けたい動作 | 安全と活動の両方をどう確かめるか |
効果測定では、転倒件数だけでなく利用延べ日数や活動機会の変化を見たい。外出や歩行を大きく制限して転倒が減っても、それだけで生活の質が改善したとは判断できない。同じ対象・期間・定義で比較し、訓練中の中断や負担も記録する。改善が見られない場合は、機器を増やす前に目標と手順を見直したい。
介護福祉士ニュースの考察
編集部の見解
今回の実務的な焦点は、訓練、定期評価、自宅への情報共有を一つの流れとして考える点にある。どこで誰が変化を見つけ、誰に伝え、いつ確認し直すかを明確にしたい。
事業所が確認するチェックリスト
本人の希望/専門職による個別の実施判断/観察する生活場面/自宅環境の未確認点/家族・ケアマネへの連絡/ヒヤリハットの定義/比較期間と利用量/再評価日を確認する。
厚生労働省資料の数値
2025年国民生活基礎調査では、主な介護原因の「骨折・転倒」は総数14.6%、要介護者14.8%。発生率や特定サービスの予防効果を示す数値ではない。
記事情報・確認方針
一次情報・参考資料:HLC公式発表/@Press配信資料/厚労省・2025年国民生活基礎調査の概況/厚労省・高齢者の身体活動と運動
発表主体:株式会社HLC
発表日:2026年10月8日
情報確認日:2026年10月21日
画像出典:株式会社HLC(@Press掲載・トレーニング風景)
執筆:介護福祉士ニュース編集部
内容確認方針:編集方針
誤りのご連絡:info@17kaigo.jp
事業者の公表内容、統計、編集部の提案・想定例を区別。個人の訓練計画や医療上の判断は担当専門職と確認してください。
