この記事のまとめ
3行でわかる要点
- 本人が自分の意思に基づいて生活を選べるよう支える取組です。
- 意思を形成する・表明する・実現する過程を支援します。
- 家族や職員の希望を本人の意思と置き換えず、記録と見直しを行います。
介護現場への影響:契約時だけでなく、食事、服装、外出など日々の小さな選択にも関わります。
確認・行動すること:分かりやすい選択肢、話しやすい環境、考える時間を整えます。
意思決定支援とは、本人が意思を持ち、伝え、生活の中で実現していく過程を支えることです。認知症や障害があるという理由だけで、すべてを決められないと扱うことは適切ではありません。何について決めるのか、どのような説明や環境なら考えやすいかを、その場面ごとに検討します。厚生労働省は認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン第2版を公開しています。
意思決定支援の3つの過程を具体例で整理する
| 過程 | 外出を選ぶ場合の支援例 |
|---|---|
| 意思形成 | 行き先の写真、所要時間、移動方法を分かる形で伝える |
| 意思表明 | 会話、指さし、表情等を使い、急かさず希望を確かめる |
| 意思実現 | 同行や休憩を調整し、実際に選んだ活動につなげる |
この表は架空の場面を用いた編集部の整理です。一度の質問で返答がないことを理由に、意思がないと判断しません。説明の量や場所、時間帯、関わる人を変え、表明しやすい条件を探します。
意思決定支援ガイドラインを現場で使うには
厚生労働省の掲載ページでは、認知症の人の日常生活・社会生活に関するガイドライン第2版と事例集を確認できます。医療、障害福祉、成年後見の資料は対象や場面が異なるため、名称が似ていても一つの手順として混ぜないことが重要です。
会議では、本人の言葉、説明した選択肢、支援を試した結果、家族・専門職の意見、なお不明な点を区分します。関係者の多数決だけで本人の希望を置き換えず、実施後にも本人の反応と選び直す機会を確認します。
関連する用語との違い
| 用語・視点 | 意味と確認点 |
|---|---|
| 意思形成の支援 | 情報や体験を得て、選択肢を理解し考えられるようにする |
| 意思表明の支援 | 言葉、表情、身ぶり、機器などで希望を伝えられるようにする |
| 意思実現の支援 | 選んだ暮らしに近づけるため、支援や環境を調整する |
| 代わりに決めること | 本人を支える取組とは区別する。権限や手続きも別に確認する |
説明の仕方を変える
一度に多くの選択肢や専門用語を示すと、考えにくくなることがあります。写真や現物を見せる、短い言葉で説明する、実際に試すなど、本人に合う方法を探します。周囲が望む答えへ誘導しないよう、質問の言い方にも気を配ります。すぐ答えられない場合は、疲労や時間帯、場所、同席者の影響を見直します。
うなずきだけで理解・同意が得られたと決めず、本人の言葉や行動から確認します。失語や聴覚・視覚の困難がある場合は、情報を受け取る方法と意思を伝える方法の双方を整えます。複雑な契約では、日常の選択を確認する場面と同じ説明だけで済ませず、関係する専門職へ相談します。
意思が分かりにくいときに残す情報
本人の発言、表情、選んだもの、拒否したことを、日時と状況を添えて記録します。以前の希望、生活歴、家族の見方は参考になりますが、それぞれ情報源を区別します。「家族が希望した」「職員が安全だと考えた」ことを、本人の希望と書き換えないことが重要です。
関係者で意見が分かれた場合は、結論だけでなく論点、試した支援、確認できたことと未確認のことを共有します。本人の意思は変わり得るため、一度の確認で永久に固定しません。緊急性がある場合は必要な対応を行いつつ、判断の理由と本人への説明を記録し、落ち着いた段階で振り返ります。
架空の例:入浴の拒否を選択の入口にする
入浴を断る人について、清潔保持を理由に説得だけを続けるのではなく、寒さ、痛み、同性介助の希望、時間帯などを確かめます。シャワーや清拭、別の時間、介助方法の変更などを説明し、本人が選びやすい条件を整えます。本人の拒否を問題行動として処理する前に、伝えようとしている内容を考えます。
選択を支えることは放置ではありません。皮膚の状態や体調を確認し、必要なケアについて看護職等と相談します。本人が選んだ方法で実施できたか、不快感が残らなかったかを確かめ、次回の支援へ反映します。
成年後見・医療の意思決定との区別
成年後見制度は契約や財産管理等を支援する制度で、日常生活のすべてを後見人が決めるという意味ではありません。医療への同意や人生の最終段階の話し合いは、関係する指針や権限を別に確認します。介護職は日頃の希望や変化を共有し、本人を含む話し合いを支えます。書類の署名を得ることだけを意思決定支援の完了にしない運用が必要です。
現場で確認すること
- 決める事柄
- 本人に届く情報
- 意思表明の方法
- 誘導や圧力の有無
- 本人の言葉と周囲の意見
- 実現方法と再確認日
確認結果は、実施する人、実施する場面、相談が必要な条件、見直す時期まで共有すると日々の支援に活かしやすくなります。本人や家族に説明するときは専門用語だけで済ませず、どのような生活を支えるための取組かを具体的に伝えます。
関連ニュースとあわせて読む
以下の記事は、実践例や製品・サービス、地域の取組を読むための入口です。企業の発表、調査結果、導入予定、研究で確認された範囲は区別し、個別の効果や給付対象を保証するものとして扱わないでください。
- 親の介護と後見を考える無料講座、10月24日に大宮で開催 参加前に整理したいこと
- 岸和田市が「身寄りのない高齢者」を支える新モデル構築へ!生前から死後まで見守る、地域包括ケアの未来
- 老人ホーム等の退去先、ホーム内死亡48%|看取り体制と新登録制度をどう確認するか
介護福祉士ニュースの考察
編集部の見解:本人が選べる条件を用意したかを、結果と同じくらい重視することを勧めます。実現が難しい希望も、難しい理由と代替案を説明することで、本人の参加を保てると考えます。
事業所が確認するチェックリスト:決める事柄/本人に届く情報/意思表明の方法/誘導や圧力の有無/本人の言葉と周囲の意見/実現方法と再確認日。
記事情報・確認方針
一次情報・参考資料:厚生労働省・認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン/厚生労働省・障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン第2版。情報確認日:2026年10月17日。執筆:介護福祉士ニュース編集部。比較表・架空の具体例・チェックリスト・考察は編集部による整理です。制度の適用や個別のケアは関係機関・専門職へ確認してください。内容確認方針/誤りのご連絡。