アートを通じた対話で高齢者のQOL向上へ!ベネッセ シニア・介護研究所「おしゃべりART鑑賞」の可能性

介護業界

介護現場で求められる「自然な対話」

介護現場では、職員がご入居者様に声をかけることで会話が始まることが一般的です。しかし、ご入居者様同士が自然に交流したり、その方の深い思いや価値観を引き出したりする機会を増やすことは、個別ケアの質の向上にとって重要な課題とされています。

ベネッセスタイルケアでは、ご入居者様一人ひとりのQOL向上を目指し、アート作品の制作活動だけでなく、「見る」ことと「話す」ことを中心とした「おしゃべりART鑑賞」にも取り組んでいます。身体的な理由で制作活動が難しい方でも参加できるこのプログラムは、東京や神奈川の複数のホームで実施されており、ご入居者様が自ら話し始めたり、職員が知らなかった経験を語ったりする場面も見られるそうです。

「おしゃべりART鑑賞」とは?

「おしゃべりART鑑賞」は、高齢者の方が誰でも気軽に参加できるよう開発された対話型鑑賞プログラムです。

おしゃべりART鑑賞のプログラム概要

プログラムは、まず参加者がはがきサイズのアートカードから好きな1枚を選び、その理由を話すことから始まります。その後、大きな作品を鑑賞し、気づいたことや感じたことを自由に語り合います。ファシリテーター(進行役)は、ベネッセアートサイト直島(BASN)の対話型鑑賞メソッドに基づき、「どこからそう思いましたか?」といった問いかけを通じて、作品に関する知識や正解を求めるのではなく、参加者それぞれの視点や価値観に基づいた対話を引き出します。

研究で分かった「対話の促進」と「QOLの向上」

今回の研究は、ベネッセスタイルケアが運営する有料老人ホームで、82歳から93歳のご入居者様5名を対象に実施されました。2025年11月から2026年2月にかけて、月に1度、全4回(各1時間)のセッションが行われ、毎回2〜3点のアート作品を鑑賞しながら自由に発言する様子が記録・分析されました。

参加者同士の対話が活性化

検証の結果、回を重ねるごとに参加者同士の発話の割合が有意に増加しました。これは、プログラムがご入居者様間のコミュニケーションを活発にする効果があることを示しています。

参加者同士の発話の割合の増加

QOLの向上傾向を確認

QOL(生活の質)についても、Short QOL-Dという評価尺度で有意な向上が見られ、WHO-5という別の尺度でも向上傾向が確認されました。参加者からは「他の入居者と話すことを楽しめた」「気持ちが豊かになった」といった声も聞かれ、気分や生活の質の改善につながっていることが示唆されます。

WHO-5スコアとShort QOL-Dスコアの変化

ファシリテーターの役割が重要

研究では、「おしゃべりART鑑賞」が参加者一人ひとりに寄り添い、語りを引き出す場となっていることが考察されています。特に、ファシリテーターの「どこからそう思いましたか?」という問いかけが、参加者が作品のどこに注目し、何を感じたのかを言葉にするきっかけとなり、互いの見方や考え方に耳を傾けながら対話を深めることにつながったと考えられます。

美的経験におけるファシリテーターの役割

介護現場で働く私たちへの影響

この「おしゃべりART鑑賞」は、介護現場で働く皆さんにとって、ご入居者様との関係性を深め、より質の高いケアを提供する上で大きな可能性を秘めています。

  • コミュニケーションの活性化: ご入居者様同士の自然な会話を促し、孤独感の解消や生活意欲の向上につながるかもしれません。

  • 個別ケアの深化: アートを通じた対話から、ご入居者様のこれまでの経験や価値観、内面にある思いを知る貴重な機会が得られます。これにより、その方に合わせた、よりパーソナルなケアの提供が可能になります。

  • 自己表現の機会創出: 身体的な制約などでアート制作が難しい方でも、気軽に自己表現できる場を提供できます。

ベネッセスタイルケアは今後も、より多くのご入居者様を対象に検証を重ね、「おしゃべりART鑑賞」をさらに発展させていく方針です。介護の仕事を通して、ご入居者様が「その方らしく、深く生きる」ことを支援する新しいツールとして、今後の展開が期待されます。

ベネッセ シニア・介護研究所の詳細はこちらをご覧ください。
https://www.benesse-style-care.co.jp/lab/

この取り組みが広がることで、皆さんの日々の介護業務がさらに豊かになり、ご入居者様との絆が深まるきっかけになるかもしれませんね。ご入居者様の笑顔と活気が増える、そんな未来がきっと訪れるでしょう。

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