親の施設入所後、実家管理を92%が家族の負担と回答|留守宅管理の調査と確認点

制度・介護保険

この記事のまとめ

3行でわかる要点
  • 空き家管理士協会のWeb調査(有効回答200件)では、施設入所中の自宅管理を家族の負担とみる回答が92.0%でした。
  • 困りごとの最多は庭木・雑草(69.0%)。遠方の家族が見に行けないことや郵便物の滞留も挙がっています。
  • 協会は留守宅管理のモデル事業を提案する方針ですが、公的な支援制度が新設されたわけではありません。
介護現場への影響

施設入所の相談では、住まいの管理を誰が担うかという家族の困りごとも表面化します。介護職やケアマネジャーは、本人・家族の意向を聞き、住宅管理を介護保険サービスと混同せずに相談先を整理する視点が役立ちます。

確認・行動すること

家族と郵便物、庭木、災害後の点検の担当者を確認し、必要なら自治体の空き家相談窓口や民間の住宅管理サービスを案内しましょう。契約や鍵の管理は本人・家族の同意と権限を確かめてください。

介護の「見えない負担」が介護離職につながる可能性

この調査で浮き彫りになったのは、親が施設に入った後も、実家の庭木や雑草の手入れ、郵便物の確認、防犯、雨漏りや災害後の点検など、さまざまな「留守宅管理」が家族にのしかかっている現実です。特に遠方に住む家族にとっては、これらの小さな作業のために実家へ通うことが、仕事や家庭生活との両立を難しくし、「介護離職」(家族の介護を理由に仕事を辞めること)につながりかねない「見えない介護負担」となっています。

高齢者の施設入所時における自宅管理と家族負担に関する調査結果

調査では、83.5%が「現在の介護・福祉制度の中では対応しにくい」と感じており、介護と空き家対策の間にある制度上のすき間が大きな問題として認識されています。

どんなことが負担になっている?

具体的にどのような困りごとがあるのでしょうか。調査結果から見えてきたのは、以下のような実情です。

「どのような困りごとがありましたか」というアンケートの棒グラフ

  • 雑草や庭木が伸びる:69.0%が最も多い困りごととして挙げています。

  • 家族が遠方で見に行けない:47.5%。移動時間や交通費も大きな負担です。

  • 郵便物がたまる:44.0%。重要な連絡を見落とす心配もあります。

  • 近隣から苦情が出る:37.0%。ご近所との関係悪化も懸念されます。

  • 誰が管理すべきかわからない:32.5%。責任の所在が不明確なことも少なくありません。

これらの困りごとの主な担い手は、「同居していない家族」が58.5%で最多でした。しかし、「誰も対応していない」という回答も34.5%あり、家族が担い切れない、または担い手がいない住宅が少なくないことが示されています。

「その自宅管理は、主に誰が担っていましたか?」という質問に対する棒グラフ

公的な支援はどこまで期待できる?

では、公的な支援はどこまで現実的なのでしょうか。自治体による月1回程度の支援については、58.0%が必要または条件付きで必要と回答しています。

協会は、仮に公的支援を設計するなら対象範囲を「最低限の確認や異常把握」に絞る考えを示しています。具体的には、「郵便物の滞留確認」「近隣からの連絡内容の共有」「月1回程度の外観確認」「台風・地震・大雨後の一次確認」「不法侵入の形跡確認」などが妥当な内容として挙げられました。

一方で、遺品整理、家財整理、修繕工事、売却準備などは、公的支援の対象外とすべきという意見が多数を占めています。

公的支援や自治体モデル事業の対象として妥当な内容を問うアンケート結果を示す棒グラフ

介護と空き家対策をつなぐ「留守宅管理」

施設に入所した高齢者の自宅は、完全に空き家になったわけではありません。本人が一時的に戻る可能性のある生活の基盤であり、地域にとっては「管理不全空き家」になるのを防ぐための予防的な対象でもあります。協会は「留守宅管理」を、住宅の保全だけでなく家族の負担軽減や管理不全空き家の予防にも関わる政策課題と位置づけています。

一般社団法人空き家管理士協会は、自治体向けの「留守宅管理モデル事業提案書」の作成を進め、2027年3月をめどに国や自治体へ政策提言を行う予定と2026年9月9日に発表しました。モデル事業の実施時期、対象地域、費用負担はまだ決まっていません。

私たちの仕事やキャリアへの影響

以下は調査結果を踏まえた編集部の整理です。モデル事業の実施や介護離職の減少が確認されたものではありません。

  • 家族介護者の負担軽減: 家族が実家管理のストレスから解放されれば、精神的な余裕が生まれます。これは、介護サービスを利用する家族とのコミュニケーションを円滑にし、より良い連携につながる可能性があります。

  • 介護離職の予防: 住宅管理の負担を分担できれば、仕事との両立を考える家族の助けになる可能性があります。ただし、この調査だけで介護離職の減少効果は判断できません。

  • 地域連携の強化: 地域包括支援センターやケアマネジャー(介護支援専門員)が、この問題に対してより積極的に関わる仕組みができれば、地域の見守り体制が強化され、管理不全空き家を減らすことにも役立ちます。

今回の調査結果と今後の政策提言は、介護保険制度だけではカバーしきれない「見えない介護負担」に光を当て、新たな支援の形を模索する重要な一歩です。私たち介護に携わる者も、この動向に注目し、より包括的な介護支援の実現に向けて期待していきましょう。

調査の対象と結果、協会が検討するモデル事業については、発表資料をご確認ください。

介護福祉士ニュースの考察

編集部の見解

この調査は家族介護者や支援者など200件のWeb回答で、全国の家族全体の割合や介護離職への因果効果を示すものではありません。編集部としては、入所時の面談で「空いた家の管理」を家族が話せるようにしておくことに実務的な価値があると考えます。

現場で起こり得る具体例

遠方の家族が月1回の通院同行と自宅の郵便物確認を同じ日に行っている場合、入所後も住宅の点検だけが残ることがあります。相談を受けた職員は、本人・家族の同意を得て、担当者と緊急連絡先を整理し、必要に応じて自治体の相談窓口を紹介できます。

事業所が確認するチェックリスト
  • 本人と家族が希望する住まいの扱い、鍵や郵便物の管理権限
  • 庭木・建物・災害後の点検を担う人と連絡方法
  • 自治体の空き家相談窓口、民間サービスの対応範囲と費用
  • モデル事業は協会の提案段階であり、地域の公的サービスとして利用可能かは別途確認

※本欄は、発表内容をもとに介護福祉士ニュース編集部が現場での確認点を整理したものです。

記事情報・確認方針

一次情報・参考資料:一般社団法人空き家管理士協会の調査発表
発表主体:一般社団法人空き家管理士協会
情報確認日:2026年10月12日
執筆:介護福祉士ニュース編集部
内容確認方針:運営者情報・情報の収集確認方針
誤りのご連絡:info@17kaigo.jp

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