親が施設に入っても「介護は終わらない」?実家管理の負担、9割超が訴え。新たな制度で「介護離職」を防ぐ動き

制度・介護保険

介護の「見えない負担」が介護離職につながる可能性

この調査で浮き彫りになったのは、親が施設に入った後も、実家の庭木や雑草の手入れ、郵便物の確認、防犯、雨漏りや災害後の点検など、さまざまな「留守宅管理」が家族にのしかかっている現実です。特に遠方に住む家族にとっては、これらの小さな作業のために実家へ通うことが、仕事や家庭生活との両立を難しくし、「介護離職」(家族の介護を理由に仕事を辞めること)につながりかねない「見えない介護負担」となっています。

高齢者の施設入所時における自宅管理と家族負担に関する調査結果

調査では、83.5%が「現在の介護・福祉制度の中では対応しにくい」と感じており、介護と空き家対策の間にある制度上のすき間が大きな問題として認識されています。

どんなことが負担になっている?

具体的にどのような困りごとがあるのでしょうか。調査結果から見えてきたのは、以下のような実情です。

「どのような困りごとがありましたか」というアンケートの棒グラフ

  • 雑草や庭木が伸びる:69.0%が最も多い困りごととして挙げています。

  • 家族が遠方で見に行けない:47.5%。移動時間や交通費も大きな負担です。

  • 郵便物がたまる:44.0%。重要な連絡を見落とす心配もあります。

  • 近隣から苦情が出る:37.0%。ご近所との関係悪化も懸念されます。

  • 誰が管理すべきかわからない:32.5%。責任の所在が不明確なことも少なくありません。

これらの困りごとの主な担い手は、「同居していない家族」が58.5%で最多でした。しかし、「誰も対応していない」という回答も34.5%あり、家族が担い切れない、または担い手がいない住宅が少なくないことが示されています。

「その自宅管理は、主に誰が担っていましたか?」という質問に対する棒グラフ

公的な支援はどこまで期待できる?

では、公的な支援はどこまで現実的なのでしょうか。自治体による月1回程度の支援については、58.0%が必要または条件付きで必要と回答しています。

ただし、支援の対象範囲は「最低限の確認や異常把握」に限定する方向が妥当だと考えられています。具体的には、「郵便物の滞留確認」「近隣からの連絡内容の共有」「月1回程度の外観確認」「台風・地震・大雨後の一次確認」「不法侵入の形跡確認」などが妥当な内容として挙げられました。

一方で、遺品整理、家財整理、修繕工事、売却準備などは、公的支援の対象外とすべきという意見が多数を占めています。

公的支援や自治体モデル事業の対象として妥当な内容を問うアンケート結果を示す棒グラフ

介護と空き家対策をつなぐ「留守宅管理」

施設に入所した高齢者の自宅は、完全に空き家になったわけではありません。本人が一時的に戻る可能性のある生活の基盤であり、地域にとっては「管理不全空き家」になるのを防ぐための予防的な対象でもあります。この「留守宅管理」は、単なる住宅管理ではなく、家族の介護負担を軽減し、介護離職を予防する視点からも重要な政策課題と位置づけられています。

一般社団法人 空き家管理士協会は、今回の調査結果をもとに、自治体向けの「留守宅管理モデル事業提案書」の作成を進めています。来年度から一部自治体でのモデル事業実施を目指し、2027年3月をめどに国や自治体へ政策提言を行う予定です。

私たちの仕事やキャリアへの影響

この「留守宅管理」の課題が解決に向かえば、介護現場で働く私たちにも良い影響があるはずです。

  • 家族介護者の負担軽減: 家族が実家管理のストレスから解放されれば、精神的な余裕が生まれます。これは、介護サービスを利用する家族とのコミュニケーションを円滑にし、より良い連携につながる可能性があります。

  • 介護離職の予防: 家族が仕事を続けやすくなることで、介護離職が減少し、社会全体の労働力確保にも貢献します。間接的に、介護業界の働き手不足の解消にもつながるかもしれません。

  • 地域連携の強化: 地域包括支援センターやケアマネジャー(介護支援専門員)が、この問題に対してより積極的に関わる仕組みができれば、地域の見守り体制が強化され、管理不全空き家を減らすことにも役立ちます。

今回の調査結果と今後の政策提言は、介護保険制度だけではカバーしきれない「見えない介護負担」に光を当て、新たな支援の形を模索する重要な一歩です。私たち介護に携わる者も、この動向に注目し、より包括的な介護支援の実現に向けて期待していきましょう。

一般社団法人 空き家管理士協会の詳細はこちらをご覧ください。

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