この記事のまとめ
3行でわかる要点
- BPSDは認知症に伴う行動・心理症状を表す言葉で、すべての人に同じ症状が現れるわけではありません。
- 本人の体調、気持ち、生活歴、周囲の環境や関わり方を合わせて考えます。
- 急な変化を認知症だけのせいにせず、観察した事実を医療職と共有します。
介護現場への影響:行動を止めることだけを目標にせず、本人の苦痛や満たされていないニーズを減らす支援を考えられます。
確認・行動すること:いつ・どこで・何の前後に起きたか、本人の言葉と体調、試した対応と反応を記録します。
BPSD(ビーピーエスディー)は、Behavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの略で、日本語では「認知症の行動・心理症状」と呼ばれます。不安、抑うつ、幻覚、妄想、興奮などが含まれます。「周辺症状」と説明されることもありますが、本人が何に困っているかを捉える視点が重要です。
中核症状との違いは?
| 捉える視点 | 例 | 支援で考えること |
|---|---|---|
| 認知機能の障害 | 記憶、見当識、判断等の困難 | 理解しやすい説明や環境を整える |
| 行動・心理症状 | 強い不安、興奮、幻覚・妄想等 | 体調、心理、環境、関わり方との関係を探る |
この区分だけで原因や診断を決めることはできません。例えば同じ「帰りたい」という言葉でも、家族が心配、トイレの場所が分からない、周囲が騒がしいなど、背景は人や場面によって異なります。「認知症だから」と一括りにせず、その時の理由を探ります。
BPSDの背景をどう考える?
認知機能の変化に、身体状態、本人の不安や経験、環境要因などが影響し合います。痛み、便秘、空腹、眠りの問題、聞こえにくさ、照明や騒音、慣れない職員との関わりなどを確認します。一つの原因だけを決めつけず、本人が話せる方法で気持ちを聞き、家族や関係職種から普段の様子を集めます。
突然の混乱や意識の変化、発熱、転倒後の変化などは、認知症の症状と決めつけず看護職・医師へ速やかに共有します。介護職が診断したり、薬を自己判断で増減したりすることはできません。薬物療法の検討は医師が行い、現場は服薬前後の変化など必要な情報を伝えます。
入浴を拒む場面の対応例
以下は架空の例です。入浴の声かけでAさんが「嫌だ」と強い口調になった場合、無理に移動を進めず、安全とプライバシーを確保して理由を確かめます。体を動かすと痛むのか、寒いのか、職員との関係や時間帯が負担なのかを考えます。
本人が選べる範囲で時間や担当者、説明の方法を調整し、必要なら部分清拭など別の方法を相談します。「入浴できたか」だけでなく、不安の強さ、本人の同意、清潔を保てたか、疲労がどうだったかを振り返ります。同じ方法を全員に当てはめるのではなく、試した条件と反応を共有します。
対応に役立つ記録の書き方
「不穏」「暴言あり」だけでは次の担当者が状況を理解できません。編集部が勧めるのは、①直前の状況、②観察した言動、③職員の対応、④その後の反応を分けて残す方法です。ここでの番号は記録の順序であり、公式の評価尺度ではありません。
例えば「15時、食堂でテレビの音が大きい中、『うるさい』と発言。静かな席を案内すると本人が選んで移動し、10分後に会話できた」と書けば、環境調整を再検討できます。職員の推測は「騒音への不快感の可能性」のように、事実と区別します。
本人と職員の双方を支える
危険があるときは安全確保と応援要請を優先します。担当者一人に対応を集中させず、交代、振り返り、医療職への相談につなげます。非薬物的な対応は、本人の生活や環境を整える支援であり、我慢させ続けることではありません。安全のためという理由だけで、安易な身体拘束や一律の行動制限につなげない検討も必要です。
関連する用語は認知症・意思決定支援・介護記録、テーマの全体像は介護用語一覧をご覧ください。
介護福祉士ニュースの考察
編集部の見解:行動の回数を減らすだけでは、本人が静かに苦痛を抱えている可能性を見落とします。本人の安心と、職員が無理なく支援を続けられる条件を同時に評価することが大切です。
事業所が確認するチェックリスト:急な体調変化/痛みや排泄/本人の言葉/音・光・人の環境/説明と選択肢/試した対応の反応/相談先と職員の負担を確認しましたか。
記事情報・確認方針
一次情報・参考資料:国立長寿医療研究センター:認知症の行動・心理症状への対応に関する資料、家族向け認知症ケア資料。資料公表・発行主体:国立研究開発法人国立長寿医療研究センター。情報確認日:2026年10月17日。執筆:介護福祉士ニュース編集部。事例・比較・チェックリストは編集部による整理です。制度の適用や支援方法は個別の条件を確認してください。内容確認方針/誤りのご連絡。