認知症高齢者のゲーム介入で「楽しい」気分が改善 介護レクに活かす際の注意点

高齢者と家族が卓上ゲーム型レクリエーションを楽しむ様子 介護テクノロジー
この記事のまとめ
3行でわかる要点
  • 軽度認知障害(MCI)10人とアルツハイマー病9人を対象に、卓上ゲームと計算・間違い探しを比べる小規模試験が行われた。
  • アルツハイマー病群では、ゲーム実施後の「楽しい」気分の評価が統計的に有意に上がった。
  • 認知機能の改善や現行製品の効果を証明した研究ではなく、介護現場では本人の反応と安全性を個別に確かめたい。
介護現場への影響

認知症のある人に活動を勧める際、訓練内容だけでなく「参加したいと思えるか」を評価する視点が重要になる。ゲーム型レクリエーションは会話や自発的な参加のきっかけになり得るが、全員に適するとは限らない。

確認・行動すること

導入前に本人の好み、操作理解、疲労、姿勢、興奮や拒否の有無を確認する。実施後は勝敗だけでなく、表情、発言、参加時間、次回も参加したいかを記録する。

豊丸産業株式会社は2026年9月30日、認知症高齢者への卓上ゲーム介入を検討した研究論文がJ-STAGEで公開されたと発表した。論文は国立長寿医療研究センターなどの研究者によるもので、軽度認知障害(MCI)の患者10人とアルツハイマー病(AD)の患者9人が参加した。結論を先に言えば、ゲーム後にAD群の気分評価が改善した一方、認知機能の改善や介護負担の軽減まで確認した研究ではない。

高齢者と家族が卓上ゲーム型レクリエーションを楽しむ様子
卓上ゲーム型レクリエーションのイメージ。画像:豊丸産業株式会社提供(発表資料)

19人が参加した小規模なクロスオーバー試験

J-STAGE掲載論文によると、参加者はゲーム介入と通常の卓上課題の両方を経験した。ゲームでは、タッチパネル上の課題に1~4人で取り組む「元気はつらつ!トレパチテーブル」を使用。比較する卓上課題では計算問題と間違い探しを行った。介入は無作為化クロスオーバー方式で、それぞれ週1時間、4週間実施している。

各回の前後に視覚的評価尺度で気分を測り、実施後には「自律性」と「参加度」を反応尺度で評価した。その結果、AD群ではゲーム介入後の気分評価が有意に上昇した(p=0.031)。また、ゲーム介入中の自律性の得点はMCI群がAD群より有意に高かった(p=0.007)。後者はMCI群とAD群の差であり、ゲームが自律性を改善したことを直接示す数値ではない。

「楽しかった」と認知機能改善は分けて考える

今回の成果で実務上注目したいのは、認知症がある人でもゲームに参加でき、AD群で直後の気分に変化が見られた点だ。一方、参加者は計19人と少なく、実行可能性をみる研究である。長期的な認知機能、日常生活動作、行動・心理症状、介護者負担、継続率への効果は、この結果だけでは判断できない。

研究に使われた「元気はつらつ!トレパチテーブル」は販売終了品であり、豊丸産業も現行の「エアロビックトレパチ!」や「TANO」の有効性を直接検証した研究ではないと明記している。施設が現行機器を検討する場合、今回の論文を製品効果の証明として扱うのは適切ではない。展示内容や現行機器については、既報のH.C.R.2026の福祉レクリエーション記事も確認できる。

介護レクに取り入れる際の評価方法

ゲーム型レクリエーションは、正答数や得点だけで評価すると本人の体験を見落としやすい。開始前に本人が興味を示すか、説明を理解できるか、座位を保てるかを確認し、実施中は表情、会話、他者との交流、途中離席、疲労を観察する。終了後には「またやりたいか」を尋ね、参加を断る選択肢も用意したい。

導入する事業所は、少人数・短時間で試し、誰にどのような反応があったかを記録する。機器の導入費だけでなく、設置面積、消毒、故障時対応、職員の進行負担、個人情報を含むデータの保存有無も確認が必要だ。選定の基本は介護ロボット・福祉機器の選び方と同じで、目的を「認知機能改善」と決めつけず、参加意欲や交流を含む評価項目を先に設定することが望ましい。

介護福祉士ニュースの考察
編集部の見解

今回の研究は、レクリエーションを「できたか」だけでなく「楽しいと感じたか」で評価する意義を示している。ただし、小規模な短期試験であり、治療効果や現行商品の有効性を断定する材料ではない。

現場で起こり得る具体例

計算プリントには消極的な利用者が、他者と画面を囲むゲームには参加する場合がある。一方、音や勝敗で不安・興奮が強まる人もいるため、個別の反応を見て中止や別活動へ切り替える。

事業所が確認するチェックリスト
  • 本人の参加意思と中止のサインを職員間で共有したか
  • 気分・交流・疲労を実施前後で同じ基準により記録したか
  • 研究対象の販売終了品と現行製品を混同していないか
記事情報・確認方針
掲載画像:豊丸産業株式会社提供(発表元)
発表主体:豊丸産業株式会社
情報確認日:2026年9月30日
執筆:介護福祉士ニュース編集部
内容確認方針:運営者情報
誤りのご連絡:info@17kaigo.jp
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