介護離職

介護離職とは、家族などの介護を理由に仕事を辞めることです。介護職が職場の労働条件を理由に離職する話とは、原因も対策も異なります。親の通院が増えた、認知症のある家族を日中一人にできない、施設入所後も実家の管理が必要になった――困りごとは一つではありません。このページでは、家族介護者、勤務先、介護事業所がそれぞれ何を確認するかを、制度と現場のニュースをつないで整理します。

介護離職と「介護職の離職」は別の課題

家族の介護に直面した働く人が退職するのが介護離職です。勤務先が介護事業所であれば、介護職自身も家族の介護者になり得ます。一方、賃金や夜勤負担などを理由に介護職が退職することは、一般に介護人材の離職の問題として論じられます。同じ「離職」の字があっても、前者では家族の生活を支える体制と勤務調整、後者では職場の労働環境が中心です。記事の数字を読むときは、誰が、どの理由で、どの仕事から離れたのかを先に確認してください。

厚生労働省の介護休業制度特設サイトは、総務省の2022年就業構造基本調査をもとに、雇用労働者の55~59歳では介護をしている人の割合が12.3%と示しています。ただしこれは「介護をしている割合」であり「離職した割合」ではありません。厚生労働大臣の2025年4月11日の会見では、介護を理由とする離職者を2022年に約10.6万人と説明しています。異なる調査の母数を混ぜて、個々の事業所の離職リスクを算出することはできません。

退職を決める前に、困りごとを時間帯と役割に分ける

「介護が大変」という一言からは対策を選べません。例えば平日の通所サービス終了後から家族の帰宅までの一時間、月二回の通院同行、夜間の転倒への不安、急な体調変化による勤務中の呼び出しを別々に書き出します。そのうえで、本人に必要な支援、家族が担える時間、使える介護サービス、勤務先で調整できる時間を並べます。家族が全部を引き受ける前提で計画を立てると、休みを一度取れても継続が難しくなります。

介護の側は本人の住所地の市区町村や地域包括支援センター、すでに担当者がいればケアマネジャーに相談します。勤務の側は本人の人事・労務担当や社内の相談窓口が確認先です。介護事業所は利用者本人の意向とサービスの範囲を確認し、家族の就労時間に合わせた連絡方法を話し合えますが、家族の勤務先の制度利用を決める立場ではありません。二つの窓口を並行して使うことが、時間の空白を具体化する近道です。

介護休業は「介護を一人で担う93日」ではない

厚生労働省の介護休業の案内によると、対象家族一人につき通算93日、3回まで分けて取得できます。対象となるのは要介護状態にある対象家族を介護する労働者で、日々雇用される人は除かれます。有期雇用者には別途要件があり、労使協定による除外条件もあります。93日をすべて使えば家族介護が終わるという制度ではありません。休業の間に相談先を探し、サービスや家族の分担を組み立て、復帰後の働き方を整える期間として考えます。

介護休業の申出は、原則として希望する開始日の2週間前までに書面等で行います。急な入院や退院調整で間に合わない場合も、自己判断で欠勤を重ねる前に勤務先へ状況を伝え、使える休暇や勤務調整を確認します。休業期間の賃金は会社の制度と、雇用保険の介護休業給付の対象要件を分けて確認してください。厚生労働省は、一定の条件を満たす被保険者に賃金日額の67%相当の給付があると案内していますが、個別の受給可否や支給額はハローワークで確かめる必要があります。

通院や面談には介護休暇、日常には勤務時間の調整

介護休暇は、通院の付き添い、手続き、ケアマネジャーとの短い打ち合わせなど、断続的な用事に使える制度です。対象家族が一人なら年5日、二人以上なら年10日までで、原則として一日または時間単位で取得できます。年次有給休暇とは別の制度で、有給か無給かは会社の規定によります。休業と休暇は目的も日数の数え方も異なるため、「93日を使い切ったから通院の休暇もない」とは考えません。

毎週決まった曜日の支援、デイサービスの送迎、夜間対応が続く場合は、休暇だけでは足りないことがあります。短時間勤務、時差出勤、フレックスタイム、所定外労働の制限など、職場で利用できる両立支援制度も確認します。厚生労働省の制度一覧には選択肢が示されていますが、具体的な勤務の組み方は会社の規定、業務、個別の要件によって変わります。夜勤のある介護職なら、単にシフトを減らすかどうかだけでなく、交代要員、担当業務、引き継ぎを管理者と協議する必要があります。

2025年4月から勤務先に求められる対応

2025年4月施行の改正育児・介護休業法では、介護に直面したと申し出た労働者に対する制度の個別周知と利用意向の確認、相談しやすい雇用環境の整備、介護に直面する前の早期情報提供などが事業主に求められています。厚生労働省の両立ポイントも、相談を受ける体制と制度の周知を案内しています。介護の事情を話しただけで、休業取得を強制する、あるいは退職を前提に話を進めるものではありません。

事業所側は、職員から相談が来てから制度を探すのでは遅くなります。就業規則と申出先を更新し、管理者、人事、現場の引き継ぎの役割を決めておきます。家族の病名や生活状況は、支援に必要な範囲で本人の意向を確かめて扱い、同僚へ詳細を広めません。勤務調整が必要なときは、いつまでの暫定措置か、再確認する日、急な呼び出しへの連絡順を記録します。制度があるだけで両立できるとは限らず、利用後の働き方を振り返ることが必要です。

認知症の家族介護では、サービスのない時間を見る

ケアマネジャー90人への調査を扱った記事では、回答者47人が担当した認知症利用者の家族の介護離職を経験したと答えています。この52.2%は「回答したケアマネジャーの経験割合」であり、家族の半数が離職したという意味ではありません。同じ調査では、本人が一人でいる時間帯の安全確認が、仕事との両立で困る場面として多く挙がりました。調査の母数と問いを確かめながら、家族の勤務中の見守りを個別に考える材料にできます。

介護職やケアマネジャーは、通所サービスが終わる時刻と家族の退勤時刻、急な状態変化時の連絡先、本人が一人になる時間を一枚の表にすると、どこが埋まっていないかを共有しやすくなります。サービスを増やせば必ず離職を防げるという根拠ではありません。本人の希望、利用条件、費用、緊急時の対応を確かめ、必要な支援を組み合わせます。家族の勤務先への情報共有は、本人・家族の意向と個人情報の範囲を先に確認します。

介護が始まる前と、施設入所後にも備える

家族の対話を扱った記事は、催しの参加者28人の回答を紹介しています。将来の仕事との両立を不安に思う声と、家族で話しにくいという声がありました。ただし小規模な参加者調査であり、全国の労働者の割合として一般化できません。本人が大切にしている暮らし、連絡してほしい人、書類の保管場所を、話せるところから確認するきっかけにできます。勤務先の制度も、必要になる前に入手しておけば相談の入口が分かります。

施設に入所した後は、日常の身体介護が変わっても、実家の郵便物や庭木の管理、通院・面会、契約や支払いの確認が残る場合があります。留守宅管理を扱う記事は、この見えにくい負担に着目しています。ただし同記事が紹介する調査や提案は、全国一律の公的な留守宅管理制度が既に始まったことを示すものではありません。介護保険サービスの対象と住宅管理を混同せず、家族、地域の窓口、民間サービスの担当範囲と費用を個別に確かめます。

家族・介護事業所・勤務先の確認リスト

家族介護者:本人の希望と困りごとを聞き、曜日・時間帯ごとの支援の空白を書き出します。住所地の地域包括支援センターや担当ケアマネジャーへ介護サービスを相談し、勤務先には休業、休暇、勤務時間の措置と申出先を確認します。退職の意思表示をする前に、復帰後の働き方まで見通せるかを話し合います。介護認定の有無だけで、労働法上の制度の対象かどうかを独自に判断しないでください。

介護事業所:本人と家族が何に困っているか、サービス時間の前後、急変時の連絡順、情報共有の同意を確かめます。職員自身が家族介護を担う場合には、利用できる社内制度、シフトの暫定対応、引き継ぎ先を明確にします。家族の就労状況を聞く際は必要な範囲に絞り、本人のケアの判断と混同しません。調整後も時間の空白が残るなら、ケアマネジャーと再検討します。

勤務先:相談窓口と就業規則を周知し、介護に直面した申出への個別の制度案内・意向確認を行います。休業だけを提示せず、短時間の用事には介護休暇、継続する負担には勤務時間の措置など、困りごとに合う選択肢を説明します。上司への共有は本人の希望を聞き、勤務調整と個人情報の保護を両立させます。制度の対象要件が不明なら都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ確認できます。

関連ニュースをどう読むか

この用語に結び付くニュースは、行政・企業の新サービス、家族や専門職への調査、制度の説明など性質が違います。山梨県の両立支援サービスの記事は地域での企業向けの取組を紹介しています。地域限定の発表を全国で同じサービスが利用できるかのように読まないでください。企業の効果見込みは実際の離職率低下が検証された数字とは区別し、対象地域、利用条件、費用、連携先を原典で確認します。

調査記事では、誰に尋ねたのか、質問の選択肢は何か、家族本人の回答か専門職の経験かを確認します。介護離職を「予防できる可能性」と、予防効果が実証されたことは異なります。ニュースを読んだ後、本人が一人になる時間、勤務先に伝える事項、地域の相談先という三つの具体的な行動に落とし込めるかを考えると、発表を実務に使いやすくなります。

介護福祉士国家試験との関係

仕事と介護の両立は、介護福祉士が家族の状況や社会資源を理解するうえで関連します。ただし、ここで特定の試験回・問題番号を「介護離職の過去問」として挙げるには、試験センターの原問題と公式正答で設問の主題を照合する必要があります。今回は一致する問題を確認できていないため、番号を付けた過去問解説は掲載しません。学習の際は、介護休業と介護休暇を混同しないこと、本人と家族の意向、相談先の役割を整理するとよいでしょう。

よくある疑問

親が要介護認定を受けていなければ介護休業を使えませんか。 厚生労働省の両立ポイントは、要介護2以上でないことや診断書がないことを理由に利用を断られた場合、都道府県労働局へ相談するよう案内しています。育児・介護休業法の「要介護状態」の要件と、介護保険の要介護認定は同じ判定ではありません。個別の対象家族・雇用条件を勤務先と相談窓口で確認してください。

93日の介護休業で介護が終わらなければ、退職しかありませんか。 介護休業は体制づくりの期間です。復帰後も介護休暇、勤務時間の措置、介護保険サービスや地域の支援を組み合わせることを検討します。利用できる制度と期間は状況により異なり、すべての負担を消せるとは限りません。勤務先とケアマネジャーに、具体的な時間帯を伝えて再調整します。

介護事業所は家族の勤務先に直接連絡すべきですか。 通常は家族本人が勤務先へ制度を相談します。本人の診断や生活の情報を外部へ渡す前に、本人・家族の意向、目的、共有範囲を確認します。緊急時の連絡方法は、利用者の安全と個人情報の扱いを踏まえて、契約や事業所の手順に沿って決めます。

一次情報:厚生労働省・介護休業制度、仕事と介護の両立ポイント、2025年4月の制度変更、介護福祉士国家試験の過去問題一覧。情報確認日:2026年10月5日。執筆:介護福祉士ニュース編集部。内容確認方針/誤りのご連絡

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