- 認知症になる前の家族の備えを考える催しで、参加者28人に仕事と介護の両立などを尋ねた。
- 回答者の21人は、将来介護が始まった場合に仕事との両立へ不安を感じるか、続けられないと思うと答えた。
- 家族内の対話と勤務先の制度確認を、介護開始前から進めることが実務上の手掛かりとなる。
職員本人が家族の介護者になる可能性は、介護事業所の勤務調整や離職防止にも関わる。調査は小規模な催しの参加者に限られ、職場全体の割合を表す数字ではない。
家族の連絡先、本人の希望、相談先を確認し、勤務先の介護休業・介護休暇の案内を入手する。必要になった際は地域包括支援センターにも相談する。

一般社団法人わたしらしく生きる認知症ネットワークは10月1日、認知症になる前から家族と仕事の備えを考える取り組みについて発表した。7月8日に開催した催しの参加者33人のうち28人が回答したアンケートと、対話の内容を紹介している。介護が始まってから制度を探すだけでなく、本人の望む暮らしや家族の役割を早めに話し合うことがテーマだ。
介護と仕事の両立への不安が見えた
発表によると、将来介護が始まったとき仕事を続けられるかという問いに、回答者の57.1%が「不安がある」、17.9%が「続けられないと思う」と答えた。合わせて21人に当たる。一方で、家族で介護について話していない、あるいは話しづらいとした回答は15人(53.6%)。介護休業などの制度を知っている人は半数だった。
この調査は催しに参加し回答した28人の声であり、全国の就労者や介護者の実態を示す無作為調査ではない。将来の離職率を予測する数字としても扱えない。ただ、備えを始める際に「家族との会話」と「職場の制度」の両方が論点になることを、具体的な回答から考えられる。

まず家族で確認したいこと
ワークショップでは、親の健康やお金、住まい、家族関係など、普段は切り出しにくい話題が挙がった。会話の入口として、本人が体調を崩したとき誰に連絡してほしいか、通院や日常生活で何を大切にしたいか、重要な書類や連絡先をどこに置いているかを尋ねる方法がある。財産や医療の決定を急ぐという意味ではなく、本人が話せる範囲から始めることが大切だ。
家族が離れて暮らしている場合は、本人の同意を得て連絡手段や緊急時の役割を共有しておくと、突然の入院や介護相談の場面で慌てにくい。介護サービスの利用が必要になった際は、住所地を担当する地域包括支援センターや自治体の窓口に相談できる。認知症の診断や介護保険の認定を、この調査だけで判断することはできない。
勤務先の制度は必要になる前に調べる
厚生労働省の介護休業の案内では、対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分けて取得できる制度を示している。これは介護を担い続けるための体制を整える期間として位置付けられる。介護休暇は、対象家族が1人なら年5日、2人以上なら年10日までで、時間単位の取得も可能だ。いずれも法定の対象要件があるため、現時点で家族に介護が必要でない人が直ちに取得できるという意味ではない。
働く人は、自分の勤務先の就業規則、申出先、時差勤務などの選択肢を確認しておきたい。事業所の管理者は、職員から相談があったときに制度説明と勤務の引き継ぎを両立できるよう、担当窓口を明らかにしておくとよい。ケアマネジャーを対象とした別の調査記事では、介護が始まった後の見守りの空白を扱っている。今回の発表は、その前段階の家族の準備を考える材料になる。
「まだ介護は始まっていない」時期に、本人の希望、家族の連絡体制、仕事の制度を別々に確認しておくと、必要時の選択肢を把握しやすい。ただし、家族の事情や本人の意思を尊重し、話し合いを一度で完結させようとしないことも重要だ。
- 職員が介護との両立を相談できる窓口と、休業・休暇の案内は明確か。
- 急な休みが生じた際の業務引き継ぎと勤務調整の手順はあるか。
- 相談した職員の家族情報を必要以上に共有しない運用になっているか。

