ケアマネの「シャドウワーク」がついに解消へ?長崎で始まった新しい取り組み「長崎モデル」を解説

人材・働き方

「シャドウワーク」って何?なぜ問題なの?

「シャドウワーク」とは、介護保険制度の枠外にある、無償の業務のことです。例えば、利用者さんの通院の付き添いや、薬局での薬の受け取りなど、「ちょっとした手助け」がこれにあたります。

高齢化が進み、一人暮らしの高齢者が増える中で、こうした「日頃のちょっとした手助け」を頼める人がいない利用者さんが増えています。そのため、ケアマネジャーのもとには、介護保険では対応できない生活支援の依頼が殺到し、無償で対応せざるを得ない状況が生まれていました。これが、ケアマネジャーの業務負担を増やす大きな原因になっており、国の「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」でも、この問題への対応が急務とされています。

一方で、この課題を解決する手段として「介護保険外サービス(自費サービス)」があります。しかし、ケアマネジャーが特定の事業者を勧めることが「利益誘導」にあたるのではないかという心理的なハードルがあり、なかなか現場で活用が進まないというジレンマがありました。

「長崎モデル」ってどんな仕組み?

この長年の課題を解決するために立ち上がったのが「長崎モデル」です。このモデルは、中立的な立場である一般社団法人 長崎県介護支援専門員協会が主体となり、株式会社最中屋が立ち上げやプロモーションを支援し、株式会社ツクイをはじめとする民間事業者がサービスを提供するという、3つの立場の団体が協力して進める取り組みです。

  • 長崎県介護支援専門員協会https://nagasaki-cma.org/): ケアマネジャーの職能団体として、利用者さんの自立支援に役立つサービスの基準作りを担います。

  • 株式会社最中屋https://monakaya.com/): この新しい仕組みを具体的に作り上げ、広めるための支援を行います。介護現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業でもあります。

  • 株式会社ツクイhttps://corp.tsukui.net/): 介護保険事業で培ったノウハウを活かし、協会が定めた基準を満たし、さらに「100年人生サポート認証」という第三者認証を取得している自費サービスを提供します。

介護保険サービスが「マイナスをゼロに戻す」役割を担うのに対し、この保険外サービスは「ゼロからプラスの価値を生み出す」ものと位置づけられています。これにより、ケアマネジャーは自信を持って利用者さんに自費サービスを提案できるようになることを目指しています。

具体的にどんな効果があったの?

この「長崎モデル」は、本格始動に先駆けて実証実験を行いました。その結果、目覚ましい効果が確認されています。

例えば、ツクイが提供する自費サービスを使って、薬局での薬の受け取りや服薬指導の代行、通院の送迎サポートなどを行ったところ、ケアマネジャーがこれまで対応していた時間が、なんと1件あたり最大120分も削減できたそうです。

この時間の削減は、ケアマネジャーが本来の専門業務であるケアマネジメントに集中できることを意味します。また、利用者さんにとっても、必要な生活支援を気兼ねなく受けられるようになるため、住み慣れた自宅で暮らし続けられる期間(在宅限界点)が大幅に延びるという、大きなメリットがあります。

この取り組みは私たちにどう関係するの?

「長崎モデル」は、長崎県内だけでなく、将来的には全国への展開を目指しています。もしこの仕組みが全国に広がれば、ケアマネジャーの皆さんの業務負担は大きく軽減され、働き方が改善されることが期待されます。

もちろん、全国展開には「誰もが納得して利用できるサービス料金の設定」や「どんな利用者さんに特に必要とされているのか」を明確にするなど、まだ解決すべき課題もあります。しかし、この取り組みは、これまで無償で提供されてきたシャドウワークを適切な有償サービスへと移行させる、介護業界にとって非常に重要な一歩です。

ケアをする専門職が疲弊することなく、ケアを受ける高齢者の方々が「プラスの生活」を送れる社会の実現に向けて、この「長崎モデル」が新たなインフラとなる可能性を秘めています。皆さんの日々の業務にも、この長崎の取り組みが影響を与える日が来るかもしれませんね。

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