- ナリコマが献立データを反映する嚥下調整食評価表を追加。2026年8月から提供している。
- 検食・食形態の確認記録を準備する機能で、利用者の嚥下機能を自動評価するものではない。
- 医療の特別食加算は医師の食事箋などの条件があり、帳票だけでは算定できない。
厨房の記録準備を支援する一方、実際の料理と本人の状態の確認、専門職への共有は引き続き必要となる。
帳票の出力例と施設の利用条件を確認し、記入・確認・保存の担当を決める。加算は厚生労働省の資料と自施設の報酬区分で確認する。

株式会社ナリコマホールディングスは2026年10月2日、厨房業務を支援するナリコマシステムに「嚥下調整食評価表」を追加したと発表した。提供開始は同年8月。献立データを使って、検食と食形態の確認・記録に必要な帳票の準備を支援する。介護施設にも関係の深い食事管理のDXだが、帳票ができることと、利用者に適した食事を判断できることは分けて考えたい。
献立の転記を減らし、確認の準備を支援
同社の発表によると、従来の検食簿に物性評価、つまり食形態を確認する項目を追加した帳票を出力できる。施設ごとの献立データを反映し、病院の管理栄養士・栄養士などが日々の確認と記録を行う準備を助ける仕組みだ。
ここでいう評価表は、食事の確認を支援する道具であり、患者・利用者の嚥下機能を自動診断する機器ではない。献立を反映しても、実際に提供された料理の状態や、食べる本人の状態まで確認が済むわけではない。現場は帳票の記入と、専門職による判断・対応を切り離さずに運用する必要がある。
特別食加算は帳票の導入だけでは算定できない
背景には2026年度診療報酬改定がある。厚生労働省の改定資料では、入院時の食事療養等に係る特別食加算の対象に嚥下調整食が加わった。対象は摂食・嚥下機能が低下した患者への、医師の食事箋に基づく適切な栄養量・内容の食事だ。評価表を出力しただけで、この条件を満たすわけではない。
3月23日付の疑義解釈では、嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査は一律の必須条件ではないと説明している。多職種で評価したうえで、医師が嚥下調整食の必要性を判断する。また、食事の物性を機器で測定すること自体も必須ではないが、担当者による品質管理は必要とされる。記録の効率化と評価の責任は別の課題だ。
これは医療保険の入院時食事療養等に関する制度で、介護保険施設や通所サービスが同じ加算を自動的に算定できるという話ではない。自施設の報酬区分と対象サービスを確認し、介護側の食事・栄養関連の評価と混同しないようにしたい。
介護現場では食事の状態と本人の変化をつなぐ
以下は編集部の実務上の整理である。給食の帳票が整っていても、食事介助の場面では、いつもの食べ方と違う、摂取量が減った、食事に時間がかかるといった変化が起こり得る。介護職が気づいた事実を看護職や管理栄養士に共有し、必要な評価につなぐ経路を決めておくことが重要だ。帳票の評価だけを根拠に、介護職が独断で食形態を変更する運用は避けたい。
例えば、献立の予定と実際の提供内容が異なった場合、予定表がそのまま実施記録として残ると、振り返りが難しくなる。変更理由、提供した食事、確認した担当者をどこに残すかを事前にそろえると、厨房と介護・看護側の認識を合わせやすい。個別の状態を記録する際は、閲覧権限や紙の保管場所も確認しておく必要がある。
導入判断は転記時間と確認漏れの両方で
まずはナリコマシステムの公式案内と自施設の利用条件を確認し、帳票の出力例を現在の記録と比較したい。必要な項目が足りるか、重複入力が増えないか、記入後の確認者や保存方法が決まるかを、栄養部門と厨房・介護側で話し合うことが出発点になる。
試行時は、帳票を作る時間だけでなく、記入漏れ、差し戻し、献立変更の反映漏れを比較することを編集部は勧める。削減できた時間を、食事の確認や職種間の共有に充てられるかが導入の価値を左右する。業務の見直し方は、介護DXの進め方でも整理している。
なお、発表は記録準備を支援する機能の紹介で、誤嚥事故の減少や業務時間の削減効果を数値で保証したものではない。導入後の結果は、自施設の人員体制や従来の記録方法も踏まえて判断し、使いにくい項目は現場から改善提案を集めたい。
転記を減らす仕組みは、確認に時間を戻せてこそ有用だ。帳票の完成を業務の終点にせず、気づいた問題を誰が判断し、次の提供にどう反映するかまで設計したい。
- 予定の献立と実際の提供内容が違う際の修正手順はあるか。
- 介護職の観察を栄養・看護部門に伝える担当と経路は決まっているか。
- 記録の閲覧権限・保管場所と、導入前後の確認漏れを評価する方法は決めたか。
帳票機能の主な支援対象は、食事の確認・記録に携わる専門職。医療の加算対象は所定の条件を満たす入院患者への食事であり、介護サービスの利用者全員ではない。

