- さいたま市は10月1日、市内10区の薬局各1店でVRを使う認知機能セルフチェックを始めた。
- 所要時間は約5分で無料。結果は認知症の診断ではなく、薬剤師から検診の案内などを受けるきっかけになる。
- 市の「もの忘れ検診」は別制度。対象や受診先を市の公式案内で確認する必要がある。
介護職やケアマネジャーが本人・家族から相談を受けた際、身近な相談先を一つ紹介できる。ただし、測定結果だけで認知症や介護の必要性を判断してはならない。
利用前に市の設置薬局一覧と開局時間、眼疾患に関する注意事項を確認する。症状や生活上の困りごとがあれば医療機関や地域包括支援センターに相談する。

さいたま市は10月1日、市内10区の薬局に各1台、VRを用いる「認知機能セルフチェッカー」を設置した。市とさいたま市薬剤師会が進める高齢者の健康づくりの一環で、株式会社FOVEが同日発表した。利用者は薬局で約5分間のチェックを無料で受けられ、利用後には薬剤師から「もの忘れ検診」の受診案内などの支援を受けられる。利用できる店舗と開局時間は事前の確認が必要だ。
薬局でのチェックは何をするのか
さいたま市の利用案内によると、VR画面に出る認知課題に視線で回答する。筆記や口頭での回答は不要で、設置薬局へ来局して利用する仕組みだ。市が公表する実施場所は10店舗で、各区に1店舗ずつある。一般の薬局すべてで利用できるわけではない。薬局によって営業時間が異なるため、訪問前に市の一覧と店舗への問い合わせで確かめたい。
最も重要なのは、この機器がヘルスケア機器であり、医療機器ではないことだ。市は認知症の診断や医学的判断を行うものではないと明記する。結果が良くても症状がないと断定できず、気になる結果が出ても、それだけで認知症と決まるわけではない。本人の普段の生活での変化や困りごとを含め、必要に応じて医師など専門職に相談するための入口と捉えたい。
利用前に確認したい注意点と検診との違い
市は、重度の乱視、緑内障、白内障、眼瞼下垂、片目失明などの眼疾患がある人は正常な測定が難しいため、利用を控えるよう案内している。視線で回答する方式だからこそ、測定できない理由を認知機能の低下と結び付けてはならない。本人が機器の装着や測定に不安を示す場合も、無理に勧めず相談方法を選ぶことが望ましい。
一方、さいたま市の「もの忘れ検診」は、市が指定する医療機関で受ける別の事業だ。2026年度の対象は、受診日に市内に住む65歳以上(年度内に65歳になる人を含む)で、受診日までに認知症の診断を受けたことがない人など。検診費用は年度内1回無料だが、精密検査が必要になった際は別途費用がかかる場合がある。薬局の無料チェックと検診の対象・費用・受診場所を混同しないようにしたい。
介護職・家族がどう活用するか
家族が「最近忘れっぽい」と話すとき、介護職は診断名を推測するより、いつから何に困っているかを聞き取り、本人の意向を確認することが先決だ。薬局のチェックは、本人が希望する場合に案内できる選択肢の一つとなる。結果にかかわらず、服薬の間違い、道に迷う、生活費の管理が難しいといった具体的な変化があれば、かかりつけ医や地域包括支援センターへの相談につなげたい。
事業所は、職員が測定結果を本人の同意なく共有したり、ケア方針の根拠として単独で使ったりしないよう注意が必要だ。受診勧奨の経緯や本人が語った困りごとは、必要な範囲で記録し、担当ケアマネジャーなどと役割を調整する。家族と早めに備えを話す方法は、認知症になる前の家族対話に関する記事でも整理している。
薬局という日常の場所で相談の入口が増えたことには価値がある。現場では測定結果の数値より、本人が何に困り、相談後にどこへつながったかを重視したい。診断につなぐ役割は市の検診や医療機関が担う。
- 利用できる10薬局、開局時間、眼疾患に関する注意を確認したか。
- 本人の同意を得ずに結果を共有したり、診断のように説明したりしていないか。
- 生活上の困りごとがある場合の医療機関・地域包括支援センターへの相談経路を共有したか。
薬局のセルフチェックは無料の気づきの機会。市のもの忘れ検診は対象要件を満たす人が指定医療機関で受ける検査で、疑いがあれば鑑別診断につながる。目的と提供場所が異なる。
