この記事のまとめ
3行でわかる要点
- 人力による抱え上げを減らし、用具・環境・作業方法を組み合わせる取組です。
- リフトを買うだけでなく、本人の状態に合う方法と職員教育が必要です。
- 利用者の安心と職員の負担を一緒に評価し、方法を見直します。
介護現場への影響:介助者の経験や腕力に依存する作業を見直し、チームで安全な方法を共有します。
確認・行動すること:負担の大きい場面を洗い出し、専門職・用具事業者と試用、手順、点検方法を決めます。
ノーリフティングケアは、抱え上げや無理な姿勢による負担を避けるため、福祉用具、環境整備、介助方法、教育、管理体制を組み合わせる考え方です。ノーリフトケアとも呼ばれます。介助しないという意味ではなく、本人の力を活かしながら、利用者と職員の双方に無理のない支援を組み立てます。
ノーリフティングケアの導入で起こりやすい課題
導入には用具の費用だけでなく、保管・充電・点検、スリング等の選定、研修時間、動線の調整が必要です。機器が遠い、手順を知る職員が少ない、本人への説明が不足していると、従来の抱え上げに戻ることがあります。これらは実施を妨げる条件であり、用具を使うケアそのものが無意味ということではありません。
購入前に実際の部屋と利用者の状態で試用し、準備から片付けまで確認します。体格の大きい人だけを対象にせず、職員の腰や利用者の皮膚・痛み等への負担から方法を評価します。
研修の学びを勤務中の実践に変える
研修では操作だけでなく、適応を判断する人、本人への説明、中止・相談の条件、点検の担当を確認します。受講後は指導者の支援のもとで現場に適用し、使えなかった理由を記録して改善します。資格や研修修了証だけで全利用者への安全な実施を保証せず、個別評価と事業所の運用を組み合わせます。
移乗介助・介護ロボットとはどう違う?
| 用語 | 主な意味 |
|---|---|
| 移乗介助 | ベッドから車いすなど、場所を移る動作の支援 |
| ノーリフティングケア | 移乗に限らず、介助作業全体の負担を減らす取組 |
| 介護ロボット・福祉用具 | 取組に活用する手段。機器ごとに用途・条件が異なる |
厚生労働省の腰痛予防資料は、全介助が必要な人の移乗・入浴・排泄時にはリフト等を活用し、人力での抱え上げを原則として行わせない方針を示しています。また、座位や立位を保てるかに応じ、ボードや立ち上がり支援機器等の検討を挙げています。これは全員に同じ機器を使う指示ではありません。
用具選びは本人の状態と環境から
体格、姿勢保持、痛み、関節の動き、理解や不安、その日の体調を確認します。立てる時間が短い人に立位を長く求めたり、機器に合わない吊り具を流用したりしないことが重要です。個別の適否は看護職やリハビリテーション専門職等と相談し、製品の取扱説明・適合条件に従います。
同時に、ベッド周囲の広さ、床面、段差、浴室までの動線、収納・充電場所を確認します。導入機器が部屋に入っても、旋回や介助者の作業空間が確保できなければ運用できません。購入前の試用では、日中だけでなく夜間の配置や実際の介助場面も想定します。
導入を日常の手順にする
最初は負担の大きい場面を一つ選び、現状の方法と危険要因を記録します。次に、担当者、必要な用具、準備、声かけ、介助人数、中止・応援を求める条件を決め、実技を含めて教育します。必要人数は機器と本人の状態等に基づき決め、一人で使えるという広告だけで配置を減らさないようにします。
- 吊り具・ベルト等の適合、傷み、点検と交換の基準
- 使用前確認と、故障・停電時の代替手順
- 新人・夜勤者を含む実技確認と再研修
- 本人への説明、同意、不安や痛みの確認
架空の例:機器があっても使われない理由
リフトを導入した施設で、夜勤者が吊り具の保管場所を知らず、準備にも迷っていたとします。問題を職員の意識だけで片付けず、保管場所の統一、利用者ごとの用具表示、短い手順書、夜勤体制での練習を行います。使わなかった理由を集めることで、運用上の障害を見つけられます。
評価では作業時間だけでなく、本人の痛み・恐怖、皮膚への影響、職員の負担感、ヒヤリハット、使用できなかった場面を見ます。短時間になっても不安が増えたなら、説明や方法の再検討が必要です。効果は機器の台数では判断できません。
関連ニュースの読み方
リフトや立ち上がり支援、入浴機器の記事では、対象者、使える環境、教育と保守の条件を確認してください。基本となる動作支援は移乗介助の解説、在宅での給付の区分は福祉用具貸与・販売の解説で確認できます。
介護福祉士ニュースの考察
編集部の見解:機器を使わない理由を責めるより、使える条件を整えることが定着につながると考えます。本人が安心できる方法と、職員が継続できる手順を同じ評価表に載せることを勧めます。
事業所が確認するチェックリスト:対象場面/本人の状態/空間・適合/教育・必要人数/点検と故障時対応/本人・職員双方の評価。
記事情報・確認方針
一次情報・参考資料:保健衛生業における腰痛の予防。資料公表主体:厚生労働省。情報確認日:2026年10月16日。執筆:介護福祉士ニュース編集部。具体例・比較表・チェックリストは編集部による整理です。内容確認方針/誤りのご連絡。