- 介護現場で人手不足が続く背景
- 利用者・介護職・事業所に及ぶ影響
- 採用だけに頼らない人材確保と定着の考え方
介護現場の人手不足は、単に「求人への応募が少ない」という問題ではありません。高齢化による介護需要の増加、生産年齢人口の減少、業務負担、賃金・キャリア、地域ごとの人材需給などが重なって起きています。
このページでは、個別の採用ニュースや介護ロボットの製品情報を追う前に知っておきたい、人手不足の全体像と対策を整理します。
最終更新:2026年9月23日
人数は国の推計であり、地域やサービス種別によって状況は異なります。制度・助成・人員基準については、厚生労働省や自治体の最新情報をご確認ください。
介護職員はどれくらい必要になるのか
厚生労働省が第9期介護保険事業計画を基に集計した推計では、必要な介護職員数は2026年度に約240万人、2040年度に約272万人です。2022年度の約215万人と比べ、2026年度までに約25万人、2040年度までに約57万人を追加で確保する必要があるとされています。
2022年度の介護職員数
約215万人
2026年度の必要数
約240万人(2022年度比で約25万人増)
2040年度の必要数
約272万人(2022年度比で約57万人増)
これは全国合計の推計です。高齢者人口が増える地域と、人口減少で事業の維持自体が課題になる地域では、必要な対策が同じとは限りません。
厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」
介護現場で人手不足が起きる主な原因
介護を必要とする人が増えている
高齢化が進むと、介護サービスの利用者だけでなく、医療的ケアや認知症対応など複合的な支援を必要とする人も増えます。必要な職員数だけでなく、専門性のある人材をどう確保するかも課題になります。
働き手となる世代が減っている
介護業界だけでなく、医療、物流、宿泊、外食など多くの業界が人材を求めています。採用競争が強まるなか、仕事内容や勤務条件を掲載するだけでは人材が集まりにくくなっています。
仕事の負担と待遇が釣り合わないと感じられやすい
身体介助に加え、記録、申し送り、家族対応、研修、委員会活動など業務は多岐にわたります。給与だけでなく、夜勤、休暇の取りやすさ、人員配置、上司の支援、業務の進め方を含めた「働き続けやすさ」が採用と定着を左右します。
採用後の定着と育成が難しい
採用人数を増やしても、教育担当者が不足していたり、配属後の相談体制が弱かったりすると、早期離職につながります。経験者だけを求め続けると採用対象が狭くなるため、未経験者を育てられる仕組みも必要です。
地域・サービスごとの偏りがある
都市部と地方、施設系と訪問系、常勤と夜勤などで採用難易度は異なります。「介護業界全体の平均」だけではなく、自事業所の商圏、職種、勤務時間帯ごとに課題を捉える必要があります。
人手不足が介護現場に与える影響
- 職員の負担増加:残業、連続勤務、希望休の取りにくさなどが発生しやすくなります。
- 離職の連鎖:欠員による負担が残った職員に集中すると、さらに退職が増える可能性があります。
- 教育時間の不足:新人への同行や振り返りの時間を確保しにくくなります。
- サービス提供への影響:受け入れ人数や訪問件数を抑えざるを得ない場合があります。
- 安全・ケア品質のリスク:確認や情報共有の余裕が減り、事故や対応漏れのリスクが高まります。
- 事業経営への影響:稼働率低下、採用費増加、派遣・紹介への依存などで収支が悪化する可能性があります。
人手不足対策の基本的な考え方
厚生労働省は、介護人材確保策として、処遇改善、多様な人材の確保・育成、離職防止・定着促進・生産性向上、介護職の魅力向上、外国人材の受け入れ環境整備などを掲げています。大切なのは、一つの施策だけで解決しようとしないことです。
採用条件と仕事の見せ方を見直す
求職者が知りたいのは、理念だけではありません。給与の内訳、夜勤回数、休日、残業、教育方法、1日の業務、職員構成、ICT活用など、入職後を具体的に想像できる情報が必要です。「誰でも歓迎」とするより、どのような人が活躍しやすいかを明確にした方がミスマッチを減らせます。
定着を採用と同じ重要度で管理する
入職初日、1週間、1か月、3か月など節目を決め、業務習得と不安の両方を確認します。退職理由を個人の問題だけで終わらせず、勤務表、指導方法、業務量、人間関係などに分解して改善します。
業務を整理して介護職に集中させる
すべての業務を介護職が担う前提を見直します。清掃、配膳、物品補充、記録転記などを洗い出し、役割分担、介護助手、外部委託、ICTで減らせる業務を検討します。テクノロジー導入では、製品を入れること自体ではなく、どの負担をどれだけ減らすかを先に決めることが重要です。
処遇改善を職員へ分かりやすく伝える
手当や加算があっても、職員が対象条件や配分方法を理解できなければ、待遇改善として認識されにくくなります。賃金だけでなく、研修、資格取得支援、キャリアの選択肢を合わせて示すことが大切です。
多様な人材が働ける環境を作る
未経験者、中高年、子育て中の人、短時間勤務者、外国人材など、対象を広げるには、業務の切り出しと教育体制が欠かせません。外国人材については、採用人数だけでなく、日本語支援、生活支援、指導方法、キャリア形成まで含めて受け入れ体制を整えます。
介護事業者が確認したいチェックリスト
- 職種・時間帯・事業所ごとの欠員数を把握しているか
- 応募数、面接率、内定率、入職率を分けて確認しているか
- 入職後1年以内の離職時期と理由を記録しているか
- 介護職でなくても担える業務を切り分けているか
- 求人票と実際の勤務条件に差がないか
- 新人を指導する職員の負担も管理しているか
- 処遇改善や資格支援を職員へ説明しているか
- ICT・ロボット導入前後の効果を測定しているか
介護職が職場選びで確認したいこと
人手不足の職場がすべて働きにくいとは限りません。一方で、恒常的な欠員を個人の頑張りだけで補っている職場には注意が必要です。求人や面接では次の点を確認するとよいでしょう。
- 実際の人員配置と夜勤体制
- 残業時間、休憩、希望休、有給休暇の取りやすさ
- 入職後の研修期間と相談相手
- 記録方法やICTの利用状況
- 処遇改善手当の対象と支給方法
- 直近の退職理由と定着のための取り組み
関連する最新ニュース
人手不足対策は、採用、処遇改善、外国人材、介護テクノロジーを一緒に見ると理解しやすくなります。
- 時給を上げても人が来ない現場で考えたい採用・定着策
- 外国人介護スタッフの採用・定着に関する事例
- 特定技能の外国人介護人材に関するニュース
- 人手不足対策としてのサービスロボット導入
- 処遇改善・人材確保・DXを一体で考えるイベント
- 介護報酬改定の仕組みと今後の確認ポイント
よくある質問
介護職員は将来どれくらい必要になりますか?
厚生労働省の推計では、2026年度に約240万人、2040年度に約272万人が必要です。2022年度の約215万人と比べ、2040年度までに約57万人の追加確保が必要とされています。
給料を上げれば人手不足は解消しますか?
処遇は重要ですが、それだけで解決するとは限りません。勤務時間、業務負担、教育、職場の人間関係、キャリア形成なども採用と定着に影響します。
介護ロボットを導入すれば職員を減らせますか?
導入目的は単純な人員削減ではなく、移乗、見守り、記録などの負担を減らし、職員がケアに集中できる環境を作ることです。業務分析や教育を行わずに製品だけを導入しても、十分に活用されない場合があります。
編集方針
介護福祉士ニュース編集部が、厚生労働省などの一次情報を確認して作成しています。個別の労働条件や制度利用については、勤務先、自治体、関係機関の最新情報をご確認ください。