- 民間調査で、有料老人ホーム等2万6,548施設のうち9,698施設に主要費目の値上げが確認された。
- 2024年7月と2026年7月の比較で、食費のみの改定が最も多かった。
- 入居費用を比べる際は、月額表示の内訳と介護保険・医療費など別払いの費用を確認したい。
施設の相談員やケアマネジャーは、以前渡した料金表が現在も有効か確かめる必要がある。利用者・家族には総額だけでなく改定日と費目を伝えたい。
候補施設の最新の重要事項説明書、料金表、契約条件を取得し、家賃・管理費・食費・追加サービス・医療費を分けて比較する。
株式会社TRデータテクノロジーは2026年9月29日、全国の介護付有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅の月額費を比較した結果を公表した。対象は2万6,548施設。2024年7月と2026年7月のデータを比べると、家賃・管理費・食費という主要費目のいずれかを値上げした施設は9,698施設、約37%だった。これは同社のデータベースを使った調査であり、すべての施設の直近の請求額を示すものではない。

何が、どれだけ上がったのか
同社の集計では、値上げした費目の組み合わせで最も多いのは「食費のみ」で全対象の13%、次いで「管理費と食費」が10%だった。値上げを実施した施設に限った費目別の平均改定額は、家賃1万500円、管理費9,200円、食費6,300円。これらは費目ごとに該当施設を集計した平均であり、3額を足して「標準的な月額値上げ」とすることはできない。
調査には2026年2~7月に同社が入手した情報を使い、2024年上期版のデータと比較している。改定しなかったように見える施設には、値上げの有無が不明な施設や、主要3費目以外を改定した施設も含まれる。現時点の全国一律の値上げ率として読むのは適切ではない。
ホスピス型住宅の数字をどう読むか
同社が独自基準で分類した「ホスピス型住宅」では、家賃・管理費・食費の値上げ額が各費目とも全体平均を上回った。一方、調査上の月額固定費の平均は14.4万円で、全施設平均の15.5万円を下回った。施設が立地する自治体の平均との比較でも約3.7万円低いという。ただし、ホスピス型住宅は法律上の単一の施設種別ではなく、この調査では標ぼうや退去率などを基に同社が分類している。
発表資料は、2026年1月時点には約5万円だった周辺平均との差が縮んだ一因として、同年6月の訪問看護に関する診療報酬改定と同時期の料金改定を挙げる。ただし同時期に起きたという観察から、報酬改定が個々の施設の値上げを直接引き起こしたとは証明できない。制度内容は厚生労働省の令和8年度診療報酬改定資料で確認できる。
入居相談と料金説明で確認したい項目
調査の「月額費」は家賃、管理費、共益費、水光熱費、食費、生活支援サービス費などの固定費を対象とする。介護保険サービスの自己負担額や、個別に選ぶサービス費用は含まない。前払い方式を採る施設のデータも今回の集計には反映されていない。このため、広告の月額表示が低い施設でも、実際の支払いが同額で済むとは限らない。
ケアマネジャーや相談員が家族へ候補を示すなら、各施設から最新の料金表と重要事項説明書を取り寄せ、入居一時金の有無、食費の計算方法、介護・看護・医療の自己負担、日用品代、退去時の精算を同じ表に並べると比較しやすい。将来の料金改定時の通知方法や、支払いが難しくなった場合の相談窓口も契約前に確認しておきたい。施設情報の確認先には厚生労働省の介護サービス情報公表制度もある。
運営事業者にとっては、価格改定の理由を「物価高」だけで済ませず、どの費目がいつ、いくら変わるのかを明示することが重要だ。特に既存入居者への説明では、改定前後の費用と別払い項目を示し、本人・家族が生活費を再計算できる時間を確保したい。今回の全国集計は相場の参考にはなるが、自施設の価格や個別契約の妥当性を判定する資料ではない。
比較すべきは広告に出る月額費だけではなく、その人の介護・医療ニーズを含めた見込み支払額だ。施設類型ごとの平均だけで「安い」と判断せず、同じ条件で見積もりを取ることを勧める。
- 現行の重要事項説明書と料金表の改定日が一致するか
- 固定費と、介護保険・医療・個別サービスの費用を分けて説明したか
- 既存入居者への通知時期と相談・精算の手順を定めたか
