この記事のまとめ
3行でわかる要点
- H.C.R.のA-1には車いす本体だけでなく、クッション、電動化機器、階段移動、サービスを扱う企業・団体も含まれる。
- 比較はメーカーの順位より、本人の移動方法、座位、移乗、住宅や送迎車の条件をそろえることが先。
- 軽量・高機能という名称だけで決めず、実機試用と見積もり、修理・代替機の体制まで確認したい。
介護現場への影響
合わない車いすは、移動だけでなく食事、排泄、移乗、介助者の運搬にも影響する。選定には本人・家族と介護職、福祉用具専門相談員、必要に応じてリハビリ職等の情報共有が役立つ。
確認・行動すること
生活目標と身体・住環境の条件を書き出し、同じ用途の候補を試す。購入・レンタルの前に、仕様、制度の適用、維持費、故障時の対応を確認する。
車いすを選ぶとき、「有名なメーカーなら安心」「軽いほど使いやすい」と考えてしまいがちです。しかし、本人が自分でこぐ車いすと、介護職が押す車いすでは優先条件が異なります。電動車いすでも、外出を支える機種と、座位や操作方法を細かく調整する機種は同じ基準で比較できません。
本記事はH.C.R.公式の出展社一覧の「A-1 移動機器(車いす等)」を起点に、国内での比較検討に役立つ製品・サービスを公式資料から整理しました。対象欄には64の企業・団体が掲載されていますが、以下はその全社を同一条件で評価したランキングではありません。主要な選択肢を用途別に取り上げ、確認できた特徴と編集部の判断ポイントを分けています。
確認日は2026年10月8日です。ここで紹介する製品がすべてH.C.R.2026の会場で展示・試乗できると確認したものではありません。展示内容、販売状況、国内での取扱いは各社へ確認してください。実機による性能測定や利用者への臨床評価は行っていません。
車いす比較は、メーカー名より生活目標から始める
最初に決めたいのは「何のために使うか」です。施設内で食堂まで移動したい、トイレで横から移乗したい、近所の店へ自分で行きたい、家族の車に積んで外出したい。同じ人でも場面ごとに必要な条件は変わります。日常の一連の動作を確認すると、カタログの比較項目にも優先順位を付けられます。
| 解決したい課題 | 最初に比較する選択肢 | 実機で確認すること |
|---|---|---|
| 介助で屋内を移動する | 介助用・調整式の手動車いす | 全幅、方向転換、ブレーキ、足台・肘掛けの操作 |
| 自分でこいで生活する | 自走用・アクティブ車いす | 車輪に手が届くか、こぎ出し、安定性、疲労 |
| 長い距離を自分で移動する | 電動車いす・電動アシスト | 操作、停止、経路、充電、故障時の帰宅手段 |
| 座っている姿勢が崩れる | 座面・背支持の調整、クッション、ティルト等 | 骨盤・体幹・足の支持、食事や移乗との両立 |
| 車載や階段が障壁になる | 折りたたみ・分解、車両や階段移動の対応機器 | 実際の車・建物への適合、介助者の操作と運搬 |
身体に合わない座幅を選び、あとからクッションだけで調整しようとすると、足の接地や肘掛けの高さまで変わります。車いす本体、座面、背もたれ、クッションは別々の商品でも、使用時には一つの組み合わせとして評価する必要があります。
手動車いすを比較する:カワムラサイクル・松永製作所・ミキ・日進医療器
高齢者の生活や事業所での介助を考えるなら、まず標準型、調整式、コンパクト型などから候補を絞ります。自走用の大きな後輪があるかどうかだけでは、本人が使えるかは決まりません。腕の動き、座る位置、ブレーキへの到達、介助が必要になる場面も確認します。
| 出展社・公式資料 | 確認できる主な選択肢 | 比較時の着眼点 |
|---|---|---|
| 株式会社カワムラサイクル | 標準、軽量、モジュール、ティルト・リクライニング等。KA800シリーズなど | 座面・背支持や移乗機能の組み合わせを、使用場面に合わせて選べるか |
| 株式会社松永製作所 | ネクストコアⅡの自走・介助、アジャスト・マルチ等 | 同じシリーズでも仕様が異なる。必要な調整と介助機能を型番単位で確認する |
| 株式会社ミキ(MiKi) | コンパクトシリーズ。SKR、SKT等の複数機種 | 狭い場所への適合と本人の座位・体格を両立できるか |
| 日進医療器株式会社 | ウルトラ、座王、ティルト・リクライニング、座位保持、標準等 | 身体条件からシリーズを絞り、座面・背支持・移乗方法を確認する |
編集部の比較の見方:この4社を「軽さだけ」で並べると、介助用と自走用、調整部品の有無が混ざります。重量を比べる際は、車輪径、座幅、クッションや付属品を含むかまでそろえましょう。複数利用者で共用する事業所では、操作を統一しやすいことや清掃・点検のしやすさも検討材料です。一方、専用車いすでは本人の身体への適合を共用のしやすさより優先したい場面があります。
「コンパクト」は小柄な人に必ず合うという意味ではありません。狭い廊下を通れても、座幅や足の支持が合わなければ生活動作に支障が出ます。ティルトは座面と背もたれの関係を保ちながら座るユニットを傾ける機能、リクライニングは主に背もたれの角度を変える機能です。名称が似ていても動きが異なるため、目的と操作手順を実機で確認します。
自走を重視する:オーエックス・パンテーラ・橋本エンジニアリング・TiLite
自走を生活の中心に置く場合は、車体の調整や構造によって、こぎやすさと安定性のバランスが変わります。軽量素材の名称は比較の入口になりますが、フレーム素材だけで本人の使いやすさは決まりません。
- 株式会社オーエックスエンジニアリングは成人向けの複数製品を展開。固定フレームのFXなど、身体や用途に合わせた仕様を検討する際の候補になります。
- パンテーラ・ジャパン株式会社の製品一覧にはX、X3、U3、S3等が掲載されています。アクティブな自走を検討するときは、各モデルの寸法と調整範囲を確認します。
- 橋本エンジニアリング株式会社のFEEL THE Xには、マグネシウムを用いた折りたたみ・固定フレームの選択肢があります。素材に加えて車載方法と完成仕様で比較したい製品群です。
- ペルモビール株式会社が扱うTiLiteは、アルミニウムやチタンの手動車いすを展開。電動車いすやクッションも扱う同社の別ブランドと混同せず、車いす本体の仕様を確認します。
試用で見る点:本人が日常の靴とクッションを使い、こぎ出し、曲がる、止まる、テーブルへ近づくという動作を試します。介助者が持ち上げる必要があるなら、取り外す部品と残る本体の重量、持つ位置まで確認します。固定フレームがすべて車載困難、折りたたみ型がすべて運搬容易とは限りません。実際の収納開口と持ち上げ動作で判断します。
電動車いすを比較する:外出と座位・操作の支援を分けて考える
電動化の目的は、手でこぐ負担の軽減だけではありません。本人が自分の意思で移動すること、長時間の座位を支えること、手指や上肢の状態に合う操作を用意することもあります。必要な機能によって比較する機種が変わります。
| 出展社 | 公式資料で確認した選択肢 | 導入前の質問 |
|---|---|---|
| WHILL株式会社 | C Lite、C2、F、R、S等 | 生活経路、収納・車載、操作方法にどのモデルが合うか |
| 株式会社今仙技術研究所 | PASEO、L-fit、Active、Light6、my ride等。機種によりリフトや座位調整機能 | 必要な座位機能と操作装置を組み合わせられるか |
| ペルモビール株式会社 | 電動車いす、手動車いす、シーティング関連製品 | 座位支持・操作・住環境に適合した構成と国内支援を用意できるか |
| 有限会社さいとう工房 | RELシリーズ。機種や構成により昇降、ティルト等 | 室内動線と生活動作に必要な姿勢・高さを実現できるか |
| サンライズメディカルジャパン株式会社 | 親会社の公式介護事業案内で電動車いすのQシリーズ等を紹介 | 日本で購入・試用できる型番、座位機能、修理対応は何か |
座面昇降や姿勢調整機能があることと、特定の人に安全に使えることは別です。天板の下に入れるか、昇降時に身体が安定するか、移乗先との位置関係はどうかを確認します。海外の製品情報を読む場合は、日本仕様、保証、国内窓口、部品供給の有無も分けて確認してください。
WHILL Model C LiteとC2:同一メーカー内でも優先条件が異なる
数値を比較する例として、WHILL公式のモデル比較から、条件の明示された項目を抜き出しました。
| 項目 | Model C Lite | Model C2 |
|---|---|---|
| メーカー希望小売価格 | 468,000円~ | 518,000円~ |
| 標準バッテリーを含む重量 | 21.6kg | 51.9kg |
| 展開時の全幅 | 587mm | 554mm |
| 回転半径 | 81.1cm | 76cm |
| 折りたたみ時寸法(全長×全幅×全高) | 500×587×755mm | 比較表の折りたたみ欄は「―」 |
価格は非課税、送料・調整費別です。仕様の注意事項は各製品ページを参照してください。重量は標準バッテリー搭載時の条件で、追加品や変更仕様まで一律に含む数値ではありません。
編集部の見解:C Liteは折りたたみと運搬を検討する際に注目できますが、21.6kgを家族が毎回安全に扱えるかは試す必要があります。一方、C2は全幅や回転半径の公表値が小さく、室内の曲がり角を検討する材料になります。ただし数値だけで実際の通過や旋回を保証できません。軽さと小回りは別の指標であり、試乗する場所を生活環境に近づけることが大切です。
新型の背景はModel C Liteの発表を扱った記事も参照できます。本記事では発表内容の紹介に加え、候補の比較と生活場面での確認に焦点を置いています。
後付け電動化:ヤマハはアシストとジョイスティック式を区別する
ヤマハ発動機株式会社の現行ラインアップでは、JWX-2は手動でこぐ動作を助けるアシストタイプ、JWG-1はジョイスティックタイプとして紹介されています。両者は操作の考え方が異なります。自分でこぐ動作を残したいのか、ジョイスティックで移動したいのかを先に整理します。
今の車いすを電動化できると思っていても、取り付け可能なフレーム、車輪径、身体への適合、搭載後の重量を確認しなければ判断できません。ユニットの価格と、車いす本体・取り付け・調整を含む完成品の見積もりも区別します。また、JWスウィングは公式の生産終了製品欄に掲載されており、新規選定では現行品と混同しないよう注意が必要です。
既存フレームを使う利点があっても、座位の課題が残ったまま動力だけを加えるのは適切とは限りません。手動・アシスト・ジョイスティックそれぞれで、本人が疲れたときや操作を誤ったときにどう支援するかまで考えます。
座位を支える:タカノ・ROHO・VARILITE・Vicair
クッションは柔らかさだけで選ぶものではありません。沈み込み、支持する位置、姿勢変化への対応、清掃・乾燥、日常の調整方法が比較項目になります。圧迫や皮膚トラブルの心配がある場合は、使用状況と身体状態を専門職と確認し、特定の商品だけで予防・改善できると決めつけないことが大切です。
- タカノ株式会社は車いす用クッションを展開。クッションS等の形状・仕様と、清掃に用いるカバーを確認する候補です。
- ROHO(ペルモビール)はエアセルを用いるクッションのブランドです。必要な調整と毎日の確認を誰が行うかも検討します。
- VARILITEと株式会社ユーキ・トレーディングは、ブランドと国内取扱い会社の関係として確認します。Solo PSV等にはエアとフォームを組み合わせた構造があり、カバーの種類も使用場面に合わせて選びます。
- Vicair B.V.(ビケア)は空気を封入したSmartCellsを用いた製品を紹介しています。国内での入手、製品ごとの構造と手入れ方法を確認します。
編集部の比較の見方:異なる構造のクッションについて、公式の説明だけで「最も褥瘡を防ぐ」と順位を付けることはできません。試すときは同じ車いす、同じ座位条件、普段の衣服で比べ、足台・肘掛け・テーブルの高さも再確認します。失禁などで汚れる可能性があるなら、カバーだけ洗えるのか、本体の扱いはどうか、交換中の予備を用意できるかも重要です。
サービスと建物の制約:セリオ・シンエンス・サンワ
車いすの性能が十分でも、故障中に移動できなくなる、家族が充電方法を理解できない、建物の階段を越えられないという問題は残ります。製品と同時に運用を比較します。
株式会社セリオと株式会社シンエンスは、電動の移動機器やレンタル等を検討する際の窓口になります。取扱い機種、地域のサービス、試用、故障時の代替、バッテリーやタイヤなどの扱いを問い合わせ、同じ条件で見積もりを取ります。「レンタル」という名称だけで、すべての点検・消耗品・出張費が含まれるとは判断できません。
株式会社サンワのStairXは階段移動の課題を検討する機器の例です。通常の車いすの段差通過と、階段を移動する仕組みは分けて考えます。階段幅、勾配、踊り場、利用者と車いすの総重量、操作する人の訓練、非常時の対応を現地で確認する必要があります。カタログ上の荷重だけを見て導入できると決めないでください。
費用と介護保険:購入価格だけでは比較できない
厚生労働省の福祉用具・住宅改修案内では、車いすと車いす付属品は福祉用具貸与の対象種目です。ただし、要支援・要介護1では原則対象外となる種目に含まれ、身体状況等に応じた例外があります。商品名に「介護保険対応」とあっても、その人の給付対象になることや自己負担額まで確定するものではありません。
介護保険の貸与、自己負担のレンタル、購入、補装具費支給制度等は、対象と手続きが異なります。ケアマネジャー、福祉用具専門相談員、自治体の窓口などに確認し、契約前に適用条件を整理します。施設が備品として購入する場合と、在宅の本人が制度を利用する場合も分けてください。
見積もりは、本体、クッション・背支持、電動ユニット、取り付け・調整、送料、消耗品、点検、修理、代替機を同じ項目で並べると比較しやすくなります。短期間だけ使う場合と数年使う場合では判断も変わります。試用料の有無や、身体状態が変わったときの変更条件も確認しましょう。
現場で比較するための具体例とチェックリスト
以下は編集部が考えた検討例で、実在する利用者の事例や製品効果を示すものではありません。
屋内で介助し、トイレへ横から移乗する場合:全幅だけでなく、肘掛けが外せる・跳ね上がるか、足台を退避できるか、便器や移乗先へ近づけるかを確認します。狭い場所で職員が立つスペースも測ります。移乗の課題は立ち上がり介助機器を導入前に確認する条件とも共通し、移動と移乗を続けて評価することが役立ちます。
自走したいが外出で疲れやすい場合:手動の調整で改善できることと、アシスト・電動化で補うことを分けます。本人が停止・方向転換できるか、屋内でも使うか、坂や横断箇所のある経路をどう移動するかを確認します。距離を延ばすことだけを導入の成功指標にしません。
家族の車で頻繁に外出する場合:折りたたみ寸法に加え、持ち上げる部品の重量、車の開口高さ、収納後の固定、帰宅後の充電場所を確認します。車いすに座ったまま車両で移動する場合は、車載収納とは別に、車いすと車両の対応条件を確認します。
- 本人の目標:どこへ、誰と、どの頻度で移動したいか。
- 身体条件:体格、座位、上肢の動き、疲労、操作の理解と意思表示。
- 適合:座幅・奥行き、背支持、足台、肘掛け、クッションを含む完成状態。
- 動線:玄関、廊下、トイレ、エレベーター、送迎車、日常の屋外経路。
- 介助:移乗、ブレーキ、折りたたみ、持ち上げ、清掃を誰が行うか。
- 運用:充電、点検、故障の連絡先、代替手段、部品供給。
- 費用:制度の適用と総額、試用・交換・契約変更の条件。
電動機器は、最高速度や航続距離だけでは安全を判断できません。製品評価技術基盤機構(NITE)の注意喚起も参考に、充電・バッテリーの扱いと実際の経路を確認します。展示会の平らな床で操作できたことを、段差や傾斜のある自宅周辺で安全に使える証明にしないことが重要です。
介護福祉士ニュースの考察
編集部の見解
A-1の比較は、企業数を数えるより「同じ困りごとを解決する候補」を並べる方が役立つ。車いす本体、座位を支える部品、動力、サービスを一つの生活の仕組みとして組み合わせ、本人が選択に参加できる形で試用したい。
事業所が確認するチェックリスト
候補ごとに同じ生活動作を試し、本人の感想、介助手順、使用できなかった場所を記録する。納品後は職員間で操作を共有し、状態変化に合わせて再評価する。軽量化や高機能化を、そのまま介助時間の短縮・事故の減少として断定せず、導入前後の実際の運用で確かめる。
記事情報・確認方針
一次情報・参考資料:本文中に各メーカー・取扱い会社の公式製品資料、H.C.R.公式出展社一覧、厚生労働省、独立行政法人製品評価技術基盤機構へのリンクを掲載。
資料公表主体:H.C.R.公式サイト、本文記載の各企業・ブランドの公式サイト、厚生労働省、独立行政法人製品評価技術基盤機構。メーカーの仕様説明と編集部の検討ポイントを区別し、未確認の比較効果や順位は掲載していません。
情報確認日:2026年10月8日
執筆:介護福祉士ニュース編集部
内容確認方針/誤りのご連絡:info@17kaigo.jp

